2月3日は節分。豆まきよりも「恵方巻き」を食べることが楽しみな人もいるのではないか。しかし、懸念されるのが食品ロスの問題。
2017年2月に『ABEMA Prime』が取材した、恵方巻きや使用予定だった食材が大量処分されていた食品リサイクル工場「日本フードエコロジーセンター」。6年後のこの日も、廃棄された多くの食品が運び込まれ、家畜のエサにリサイクルするための作業が行われていた。
2019年に食品ロス削減推進法が施行されたこともあり、恵方巻きの廃棄量は徐々に減っている。コロナによる経済活動の再開もあり、2022年は前年よりも増加はしているが、それでもコロナ前の2019年と比べるとその量は減っていて、社会全体の努力が垣間見える結果となっている。
コンビニやスーパーなど小売各社は、食品ロスへの取り組みとして、食べきりサイズを商品化したり、消費期限が迫った商品を値下げしたりするなど、対策を講じてきた。その中の一つである、恵方巻きやおせちなど季節商品の予約販売について、食品ロスに詳しいジャーナリストの井出留美氏は「効果はあると思う。2016年頃は全く予約制がなかったが、7年経ってかなり浸透してきた。コンビニのポプラは去年から予約だけにしていて、売れる分だけ作るのが一番いいと思う」との見方を示す。
とはいえ、予約販売と店頭販売を同時に行っている店は多く、店頭販売でロスが発生する構図は変わらない。リディラバ代表の安部敏樹氏は「恵方巻きがある種、食品ロスのシンボルとして扱われるようになったのは、我々自身が主導してきたところがある。コンビニが仕掛けた食文化であること、そこにはサプライチェーンの大きな問題がある中で、わかりやすい事例が、その日だけ売られてすぐ賞味期限が切れる恵方巻きだった。大きな関心が集まったけど、食品ロスの中では非常に小さなパーツなので、本当は問題全体を語らなければならない」と説明。
また、“作り過ぎ”の背景として、「コンビニと食品工場との契約で、例えばお弁当の売れ行きがいい日に、“一定の時間内にお弁当を持ってきてほしい”とコンビニがわがままを言えるかたちになっている。ゼロから準備していると間に合わないので、食品工場では米を炊いて待っている。この契約が改善されていないのは大きい問題」「スーパーで作っているのか、仕入れているのかも大きな要因だ。仕入れ値よりも安く売ることに対する抵抗感は強いが、自前で作っている場合はとりあえず売ったほうがいいという話になる。そこも1つの分岐点になっている」とした。
一方で、食育日本料理家の梛木春幸氏は「うちはSNSだけで告知して、毎年だいたい1000本の予約をいただく。それを全国に発送しているが、プロトン凍結機という握り寿司も冷凍できる特殊な冷凍庫があるので、一切ロスがない。料理人を35年やっているが、常識で考えられない機械が出てきているので、そういったものを上手に使っていくのも1つの手だと思う」と投げかける。
これを受け安部氏は「この6年で前に進んだものは多い。小売業界の習慣として、賞味期限が3分の1になったら並べないルールがあるが、かなり改善されてきている。技術の話も、冷凍庫のような保存もあれば、POSデータを基にした需給予測の精度が上がることで、追加発注をしなくて済み、用意しておく米の量も減る。技術でカバーしていけるところは一定ある」とコメント。
その上で、「“食べたいものを新鮮な状態で、24時間いつでも欲しい”という消費者がいたら、店側は応えようとしてしまう。当然、そこに最適化しようとするとロスは生まれざるを得ない」と、消費者側の意識にも言及した。
パックンによると、「海外で賞味期限を載せないという運動が広まっている。我々は食べ物をガンガン捨てているが、人間には食べられないものがわかるセンサーがついていて、“まずい”と思ったら捨てればいいと。僕も最近挑戦している」という。
安部氏は「アメリカに比べると、日本はフードバンクのサイズがすごく小さい。あげることに誰も違和感はないが、今どの世帯に必要か、その近くで余ったところはどれぐらいなのか、というマッチングの仕組みがない。データを可視化して、それがもっとうまくいくようになると、10倍ぐらい伸びると思う」とした。
井手氏は、「お手頃価格設定で売れ残る前に割引」「可能な限り消費期限ギリギリまで販売」という飲食小売店側の対策とともに、行政へも食品ロス削減推進法に具体的なインセンティブやペナルティーを設けることを提案した。(『ABEMA Prime』より)
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