「育児中など、さまざまな状況にあっても主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」(岸田総理)
【映像】スキマ時間でなんとか…資格取得を目指す育休ママの一日 ※円グラフ(画像あり)
今とは違う職場や職種で力を発揮することを前提に新たなスキルを身につけるリスキリング。岸田総理は国会答弁で、これを産休・育休中の人ができるよう政府が支援していく考えを示した。
しかし、ネットに溢れたのは「育児を甘く見るな!」「育休中にリスキリングなんて無理」「子育てをしたことがないのか」など、批判の声だ。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、育休中のあやのんさんはこう語る。
「各々によって環境が違う。例えば、子育てをフォローしてくれる人がいたり、お子さんが1人でとても育てやすい子だったりする。一方で、余裕がない人もたくさんいると思う。一概に、育休中のリスキリングができる・できないの判断は難しい。頑張りたい人を前向きに支援するのはいいと思う。ただ『できない』と思っている人を認めていくことも、社会にとって大事だ」
マスコミで総務経理を務め、育休中にファイナンシャルプランナー2級取得を目指しているあやのんさん。4月には復職予定だという。
「育休中に3級の勉強を始めて取得した。ゆっくりだが今も勉強は継続していて、2級に進もうと思っている。私は4人家族で、長男3歳と0歳の女の子、主人がいる。主人が早く帰ってくるように努力してくれている。昼間は、保育所で長男を預かってもらえる。その時間に0歳の娘に集中して育児と勉強ができる」
勉強を始めようと思ったきっかけは、将来への不安からだった。
「私自身は共働きで、ずっと正社員で働いてきた。1人目の時も今の会社で育児休暇を取らせていただいた。1人目の時に育児休暇から復帰して、子育てをしながら仕事を約2年間続けた。現実は急に休んでしまったり、正直自分の思うような仕事がなかなかできなかった。働き方の選択肢を自分の中で作りたかった。そこから資格の勉強をスタートさせた」
「育休プチMBA」などを主催するワークシフト研究所代表の小早川優子氏も「本当にいい条件がそろっていないと難しい」と、育休中のリスキリングの難しさを語る。
「出産は大仕事で、育児は24時間全部のエネルギーを注がないといけない。現状として産休・育休さえ満足に取れない、復職後に働く環境が整っていないケースもある。お子さんに障害や疾患があったり、アレルギーなどを持っていても、ワンオペで回さなければいけない人もすごく多い。学ぶ意欲がある人たちが、学べないのが現状だ。学び直しの後押しは、条件がそろっている人にはいいかもしれない。一方で、格差を生んでしまう懸念もある」
小早川氏は岸田総理の発言をどのように受け止めているのだろうか。
「発言内容に関しては、これまでキャリアアップが難しかった子育て社員を支援するための手段だと思った。流れとしては悪くない。それ以前にやるべき施策はたくさんあると思うが、今回は発言が切り取られてしまったように感じた」
その上で、小早川氏は「子育て支援とリスキリングは分けて考えてほしい」と訴える。
「育休は育児に専念しなくてはいけない。リスキリングと混ざってしまうと育休ではない。男性の育休を促進するための“呼び水”のように使ってほしくない。実際には、育児をしない育休者が増えてしまうことも考えられる。その場合は、リスキリング休業として別で捉えてほしい」
先月30日、予算委員会で岸田総理は「私自身も3人の子供の親だ」と発言。自らの育児経験を強調し、リスキリングについて「本人の希望を前提とした話」と説明した。この発言にNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「一番の問題点はこれだ」と指摘する。
「総理大臣は全ての問題に責任がある。『経験したから分かる』と言ってしまうと、全部経験しないと説得力がなくなってしまう。政治家で、妻や地元に任せて、東京で頑張ってきたところもあるだろう。普通の家庭とは違うのに『私は経験したから分かる』と経験特権を言ってしまった。『リスキリングは裕福な人』というイメージになり始めている。あやのんさんを含めて、うまく両立しようと頑張っている人から具体策を聞いていく方に転換するべき。一番聞く力が求められている」
(「ABEMA Prime」より)
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