「和式便器の生産終了 318年の歴史に幕」「全自動除夜の鐘、設定ミスで鳴りやまず」「イーロン・マスク首相 高まる待望論」……これらのニュースは「虚構新聞」が扱った全てウソの記事だ。
【映像】「女子用水着廃止」逆に“現実”になってしまった「虚構新聞」の記事(画像あり)
実際にありそうで思わず笑ってしまうニュースを発信している虚構新聞では、政治、経済、科学、スポーツと本物の新聞に負けじと約1000本もの記事を掲載している。一体、誰が何のために発信しているのだろうか。
▲「虚構新聞」が扱った全てウソの記事
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した虚構新聞の社主UK氏は「一番の基本は読む人に笑って、クスっとしてもらう。それがポリシーだ。その時々の人が関心を持っている大きなテーマを扱いたい」と話す。
2004年の誕生以来19年にわたり、たった一人で発信してきたUK氏。虚構新聞の運営は副業であり、普段は教育関係の仕事をしているという。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者で、「ウソをウソであると見抜ける人でないとネットは難しい」の名言が有名なひろゆき氏は「ウソを伝えるために、人が理解するテクニックを使っている。同じネタを違う人が書いても、ここまで説得力がある文章にならないと思う。すごい人を騙すのがうまい」とUK氏を絶賛。これにUK氏は「ありがとうと言っていいか分からない」と応じた。
一方で、UK氏が感じているのは、メディアリテラシーの低下だ。
「低下というと、平均から落ちているイメージがあると思うが、僕の感覚としては、おそらく元々のリテラシーが高かった。それが、ネットをいろいろな人が使うようになって、相対的に下がったのではないか。だからみんなが落ちたわけではない。ネットをたくさんの人が使えば、必然的にそうなる」
時事YouTuberのたかまつなな氏は「私も思う」と共感。
「過去に『若者は選挙に行くな』という風刺動画を作ったことがある。高齢者の人が出てきて『私たちは得したいから若者は選挙に行かなくていいよ』という皮肉の動画だった。それが、学校の子供に『おばあちゃんにこんなふうに思われているんだ。ショックです』みたいに言われた。ジャーナリストの先輩にもガチで批判されて『意外と伝わらないんだな』と思った」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「本来、日本はそういう風刺を楽しむ文化が昔からある」と話す。
「90年代、2000年代初頭のインターネットには必ずあったが、ただやっている人が少なかった。20年前はあれだけ頭が悪そうな感じでみんなやっていたが、実際には年収の高いエンジニアがいっぱいいた。そういう人たちがバカなふりしてやっていた。2010年くらいからTwitterを含めて、どんどんネット人口が増えた。日本のTwitter利用者は今、人口の半分の6000万人ぐらいだ。そうすると、どうしても理解度の低い人が増えてくる。人口が増えた結果、衆愚化した。そこは引き受けざるを得ないのではないか」
その上で、佐々木氏は「明らかに誰が見てもウソだと分かるのは問題ない。一番問題になっているのは見え方によってウソか本当か分からないものだ」と指摘する。
「簡単な例を挙げると、福島の原発の事故の後、甲状腺がんが増えた。それは外形的には正しいが、医療従事者の人たちから『過剰診断だ』と散々言われている。でも、いまだに『甲状腺がんが増えている』と書き続けているメディアがある。それを『違う』と言えるかどうか。非常に微妙な話が山ほどある」
UK氏は「ディープフェイクなど、すごく精巧な動画も出ているので、技術的な部分に関しては、もうどうしようもない」とした上で「“たかがネット”という感覚を持った方がいい」とコメント。
「ネットは数ある情報の中の1つであって、ネットだけが全てじゃない。言ったら僕の頃はテレホーダイで、夜だけやっていた。昔からのめり込みがちな性格だが、今は情報過多になりすぎてさばききれない。ネットの時間を減らして、読書の時間を増やした。今は、みんなスマホで一日中オンラインでつながれる状況にある。ちょっとネットから一回距離を置くほうが良いと思う」
(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側