デンマークの世界的有名レストランが1月、2024年の冬を持って通常営業を終えることを発表した。
北欧料理を独創的にアレンジした料理が評判を呼び、2003年のオープンから一躍有名店となった『noma』(ノーマ)。ミシュランでは3つ星を獲得し、イギリスの雑誌社が行う世界のレストランランキングで1位に複数回輝いたことから“世界一のレストラン”と称され、人気を集めていた。
閉店の理由について、世界の飲食店事情に詳しいレストランジャーナリストの星野うずらさんは、こう話している。
「無給の研修生を雇えなくなったことが大きな理由のひとつ。また、有給のスタッフたちも時間に制限がないような無茶な働き方をしていたはずで、そういう働き方はすべきではないという方向に多くの人々の意識が向いてきたことも理由のひとつ」
ニューヨークタイムズは、nomaでは長年、多数の研修生が無給で働いていたことや
シェフの長時間労働が常態化していたことなど、劣悪な労働環境に陥っていたことを報じている。
こうしたことで現場の負担が増え、営業の継続が困難になったのではないかと星野さんは話す。
2025年以降、nomaは料理の研究・開発をメインに海外での期間限定営業は続けていくという。
nomaの閉店について、日本も他人事ではないと大阪の三ツ星レストラン『HAJIME』のシェフ兼日本飲食団体連合会の理事を務める米田肇さんは話している。
「飲食店が今抱えている問題はずっと同じ状況だ。飲食業が限界だということを感じていただきたい」
米田さんが指摘するのは、飲食業といった事業の大部分を人間の労働力に頼る「労働集約型産業」の限界だ。
「2019年のコロナ感染前の状況でも、消費税の増税や働き方改革など色々なものがあったが、その前の段階で本当に飲食業はしんどい状況だった。生産効率も低く、商品も少ない上にそこまで高価格じゃないとなってくると、経営的には絶対的な売り上げというのも絶対値が少なくなってしまうので、辛抱するしかない状況になっている。価格を今の10倍くらいにしないと難しい」(米田肇さん、以下同)
では今後、日本の飲食業が営業を続けていくためにはどうすればいいのか。米田さんは、料理の価格見直しや従業員の働く環境の改善、AIやロボットの導入による生産性の向上に加え、政策面でのアプローチも必要になるのではないかと話した。
また、国に対して政策面でお願いしたいことを明かしている。
「会社の仕事量に対してどれだけの人間がそこで従事しているのかっていう割合によって、産業別の税制というものを変えていく。もう一個が産業別ベーシックインカムみたいなものを導入できるんじゃないかなと思う。私たちの仕事っていうのは技術を習得しなければいけない時間というものがあり、そういう部分でベーシックインカムを導入する」
そして、米田さんは技術や精神性といった“食”という文化を未来に残していくことの重要性も指摘している。
「『チューブや真空パックの食事ばかりになる社会でいいですか?』と警告されている気がする。今、ギリギリの分岐点に来ているのではないか。人間の働きによって文化が作れているような産業を、今後どうするか。どうやって社会に組み込んでいくのか、考える必要がある」
(『ABEMAヒルズ』より)
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