茨城県 公立校の部活動は平日2時間… 上限設定で進路に影響も?教員が警鐘「子どもたちのチャンスがなくなる」
上限設定に教員が警鐘
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 平日は1日2時間を上限に。茨城県の教育委員会が発表した部活動の運営方針に疑問の声が上がっている。部活動改革に揺れる教員と保護者を取材した。

【映像】茨城県公立学校の「部活動の運営方針」の改定(表)

「今回、茨城県の公立高校のみが該当ということで、かなりのハンデとか差別されているんじゃないかというところが一番の問題かなと」

 こう話すのは、茨城県内の公立高校の生徒の保護者Aさん。部活動の活動時間に上限を設けるという決定に疑問を感じている。

 茨城県教育委員会が去年12月発表した新たな部活動の運営方針によると、今年4月以降、茨城県内の公立学校の部活動について、平日は2時間、休日は中学校が3時間、高校4時間と上限が設定され、活動の実績はホームページでの公表が求められるようになる。

 またこの他にも、部活動を地域のスポーツクラブなどに移す段階的な地域移行なども盛り込まれた。

「子どもたちの十分な休養の確保と教員の働き方の改善とが実現し、そのことが子どもたちの学びの質の向上とスポーツ・文化芸術活動の振興に帰結することを期待する」(茨城県部活動の運営方針から)

 子どもが野球部に所属しているというAさん。私立や県外の学校と差ができてしまうのではと不安を募らせる。

茨城県 公立校の部活動は平日2時間… 上限設定で進路に影響も?教員が警鐘「子どもたちのチャンスがなくなる」
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「平日2時間、週末が土日どちらかの4時間ということだと、(野球の)試合そのものが2時間半〜3時間近くかかる。そうなると、1試合しかできないのが現実かなと。他県だと1日3〜4試合とかやっている。その差が明らかに出てしまうかな」

 また、子どもからは戸惑う様子もあったという。

「短期集中で短時間でというできる部分と、どうしても試合などで時間がかかるものについては短縮できないので、自分たちがどうしていくのかというのが、まだ子どもたちの中でもいろいろ試行錯誤している」

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 こうした中、茨城県内の公立学校に通う生徒の保護者らが中心となり、4月からの運用開始の延期と内容の見直しを求めるオンライン署名が立ち上がった。

 オンライン署名サイト「Change.org」には、「ただでさえ私立と比べ、少ない練習時間を切り詰めているのに、これ以上短くされると私立に勝つことが限りなく不可能になってしまう」「新しく入ってくる新入生の高校の選択にも大きな影響を与えてしまうと思う」といった生徒たちの悲痛な叫びが上がっていた。

 一方、今回の改定の目的としては、近年社会問題となっている教員の働き方改革の側面もある。新たな運営方針には、期限を設定し、休日に部活動の指導を行う教員がゼロになることを目指すことも盛り込まれた。

 しかし、現在、部活動に携わっている教員からもこの改定を疑問視する声が上がっている。

「4月1日になって突然、平日2時間、休日4時間だと子どもたちは聞かされるのかなと思うと本当に胸が締め付けられる」

 こう胸の内を明かしたのは、茨城県内の公立高校に勤務し、運動部の顧問を勤めている教員のBさん。教員の働き方改革は必要だと話す一方で次のように述べた。

「部活動を一生懸命やりたいと志を持って(公立高校に)進学した生徒もたくさんいる。これを一律にやっていくのは、かなり危険なのかなと」

 この他にも、活動時間の上限設定による試合への出場機会の減少や、地域移行にあたっての受け皿が出来ていないことなど改定にあたっては課題もあると指摘するBさん。そのうえで、入学時や卒業後の進路選択が狭まってしまうなど、これからの高校生の不利益につながることを危惧している。

「現状では私立高校に進学をすれば、部活動に制限はなく活動ができる可能性が高いと思う。部活動をしたい生徒は私立高校に流れると。例えば、部活動での実績によって(大学に)進学ができる生徒も現実的には一定数いるかと思う。公立の学校に進学した子どもたちにとっては、チャンスがなくなってしまう不安もある」

 今回の改定に懸念を持つ人たちからは、県が部活動の運用方針を決めるにあたっては賛成・反対も含めた、現場の意見に幅広く耳を傾けてほしいという声が上がっている。

「部活動の指導をしたいから教員になりましたという方もかなりいると思う。自分の意思でやっている方と、そうでない方と多分おられると思うので、そういうところの意見もちゃんと聞いた上で決めて頂きたい」(保護者Aさん)

 「働き方改革も部活動改革も、今後必ず必要になってくる政策だとは思う。ただ、その内容をもう1度見直して現場の声を聞きながら、地域や学校、子どもたちにとっても良い方向をきちんと形を作っていくことが求められるのではないかと」(教員Bさん)

(『ABEMAヒルズ』より)

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