1月中旬、高齢化が進む人口およそ2300人の福井県池田町が、突如物議を醸すことになった。発端は移住者への提言「池田暮らしの7か条」だ。
【映像】問題になった広報紙「いけだ」2023年1月号(表紙画像)
広報誌で「都会風を吹かさないよう心がけてください」「品定めがなされていることを自覚してください」と、都会と田舎での暮らし方は違うと説明、協力を呼びかけた池田町。
これにTwitterでは「都会風吹かすな?品定め?怖いんだけど」「こんな町に移住したくないでしょ」といった声が殺到。「都会風」「品定め」といった一部の言葉が一人歩きし、批判の的となってしまった。
一方で、全文を読むと厳しい言葉だけではなく、田舎暮らしの楽しみ方も明記されている。
積極的に移住者の受け入れを行い、出産時に20万円の準備金や0歳から3歳児の家庭では月2万円の商品券がもらえるなど、子育て支援も充実している池田町。町の努力と自然豊かな田舎ライフへの憧れからか、県内外からの移住者は毎年20人ほどいるという。
ニュース番組「ABEMA Prime」では、池田暮らしの7か条から地方移住の理想と現実、心構えを考えた。
第4条にある“都会風”とは、どういったことなのだろうか。
福井県池田町に移住して14年目で、米作りや移住希望者を支援する丸石純一町議会議員は、こう説明する。
「田舎は自治をしなければ、維持できないところがある。都市部と比べて自治に携わることをより積極的に進めないといけない。『自分のところだけ守ればいい』『他の場所は手伝わない』という考え方を都会風として区長会が捉えたのだと思う」
丸石氏自身、第4条をどのように受け止めたのか。
「大変一方的な口調だと感じた。一方で『これを知ってもらいたい』という事実はたしかにある。ただ、もう少しサポートする言葉を入れたほうがよかった」
丸石氏の移住当初はどのような感じだったのか。
「どうしても価値観が違うのは感じた。もしかしたら私自身も都会風を吹かせていたのかもしれない。私は田舎暮らしをして、お米も作りたかった。どうやったら溶け込めるのかを考えて、教えていただいた。短い文章にしたものが“池田暮らしの七か条”に現れている」
移住促進について、行政と地域住民は合意できているのだろうか。
「基本的に移住はウェルカムな姿勢だ。県内でパートナーシップ制度があり、これを池田町でも積極的に取り入れようという話をしていた矢先だった。今回七か条だけがクローズアップされて、すごく閉鎖的なイメージがついてしまった。もともと住んでいる方も『残念だ』と言っていた。『移住者に失礼に当たるのではないか』といった意見が町の中で多数出ている」
池田町に限らず、地方はどこも同じような状況を抱えているのだろうか。東京から全国への地方移住をサポートするNPO法人「ふるさと回帰支援センター」広報の吉冨諒氏は、こう話す。
「移住者向けに『うちの集落はこういうルールがある』というものをしおり等で明文化している地域はけっこうある。内容的には池田町の七か条と通じるものがある。例えば、集落の出事(でごと)があって『出られないときはこうして』と書いてある。お節介と感じるかもしれないが『そういうものだから』みたいな記述も多い」
吉冨氏は“池田暮らしの七か条”を見て、どう思ったのか。
「言い方と、言いたいメッセージをちゃんと分けて考えてあげた方がいいと思う。事実、内容は『たしかにそうだ』と思えるものもある。地域として、最初に『うちはこういうところです』と伝えようとすることは、とても意味がある。ただ、言葉尻や文言を見ると、炎上するところはあると思う」
歌舞伎町ゲイバー「CRAZE」店員のカマたく氏は「私は村生まれだ。家から出て30分くらいして帰ってきたら、知らない人が家にいるような環境だった」と話す。
「お隣さんが『お茶飲む?』と聞いてきたり、野菜がボンと置いてあったり、本当にプライバシーはない。でも、みんなのんびり暮らしたいと夢を抱いて来るから、池田町が『現実を見ろ』と書いた。逆に親切だと思う。移住してからでは遅い。覚悟のうえで来いということだと思う」
ライターのヨッピー氏は「田舎暮らしをしてみたくて、移住体験ツアーに参加したことがある」という。
「行ったら農家の方々が『若い人が必要だ』と言っていた。それはわかるが『こういう細かい畑仕事は女の人の仕事だから、女の人に来てほしい』と平気で言う。女の人はけっこう引いていた。時代錯誤で、しんどそうだなと思った」
体制を変えようと誰かが音頭をとることはないのか。吉冨氏は「移住希望者も受け入れたい地域もかなり多様だ」と答える。
「我々は全国各地からお話を聞かせていただくが、多様なもの同士をどうマッチングするかが重要だ。正解があるわけではない。池田町のケース以外にも、いろいろなパターンがある。お互い望んでいるものがフィットして、つながり合えれば、それが一番いい」
(「ABEMA Prime」より)
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