2月21日に東京ドームで行われる武藤敬司引退試合「chocoZAP presents KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~」で、またひとつビッグサプライズが発表された。かつて『ワールドプロレスリング』の実況アナウンサーとして、“スペースローンウルフ”と呼ばれた若き日の武藤の試合を実況した古舘伊知郎が、武藤敬司引退セレモニーのナレーションを務めることが決定したのだ。

 古舘さんがプロレスラーの引退でナレーションを務めるのは、1998年4月4日に東京ドームで行われたアントニオ猪木引退試合以来のこと。しかも今回は、リングサイドの放送席からではなく、リング上で武藤敬司選手へ自作の詩を読み上げるという。そんな古舘さんに今回、詩の朗読を引き受けた理由と当日の意気込みを聞いた。(取材・文/堀江ガンツ)

――2.21東京ドームでの武藤さんの引退試合で、古舘さんがリング上から詩の朗読を行なっていただけるということで、ファンの皆さんも大変喜んでいると思います。

古舘 いや~、そんな。こちらこそやらせていただき、ありがとうございます。

――1998年4月4日、東京ドームでのアントニオ猪木さんの引退試合以来ですよね?

古舘 でも、あの時はリングに上がってませんからね。放送席で生読みしたんで。だから、今回はぼくにとっても初めてのことです。基本的に、あの神聖なリングに上がるのはレスラーとコアな関係者以外はダメだと思っているんですよ。だから俺とか、ごぼうの党の人とかは本来上がっちゃいけないの(笑)。

――後者はとくに上げたらダメですね(笑)。

古舘 俺もへたしたら、内藤哲也選手にわたすべき花束をマットに叩きつけますから(笑)。だから、自分なんかが上がっちゃいけないとは思ってるんだけど、半分うれしいんですよ。武藤さんサイドが、ロートルの実況アナを呼んでくれてすごくうれしい。だけど、半分はおののきもありますよ。喜び半分、おののき半分ですね。

――「おののき」とはどういったものに対するおののきですか?

古舘 やっぱりおののきは、いまの若い人たちに「古舘? ニュースやってた奴が、なんでリングに上がって生ナレーションみたいなことをやってるわけ?」みたいに思われることですね。

――“過激なアナウンサー”古舘伊知郎を知らない世代のお客さんも相当いるだろう、と。

古舘 東京ドームには昔からの武藤選手のファンだけじゃなく、いろんな世代のファンが来るだろうから、10代や20代でちんぷんかんぷんな人も当然いると思うんですよ。内藤選手のファンも来るだろうし、プロレスのお祭りだから来るという人もいる。その中に俺が出ていって、「なんなの?」っていうのがあるじゃないですか。

――でも、多くのファンは大喜びだと思いますけどね。

古舘 そう言っていただけるとうれしいけれど、ぼくは現役でプロレスの実況アナウンサーをやっていた頃もリングには上がっちゃいけないと思っていたんですよ。ちっちゃい頃から力道山のプロレスを見て育った人間ですから、とくに’80年代前半は自分がリングに上がって、司会のような感じで「IWGPという新しいものが始まります」としゃべったりすることもありましたけど、リングに上がるのは畏れ多いわけです。

――そういう思いだったんですね。

古舘 なので、ぼくは新日のリングに上がるときは必ず靴を脱いでいたんですよ。リングシューズの世界に土足で入るなんて失礼だと。人それぞれでいいとは思いますけど、ぼくは勝手ながら靴を脱いでソックスになってサードロープとセカンドロープの間をくぐったりしてたわけです。それでいつかトップロープとセカンドロープの間からくぐってみたいんだけど、背がちっちゃいからまたげない(笑)。

 いつもコンプレックスを感じながら中に入って偉そうに喚いてたましたけど、あの時代はウケたんですよ。現役で実況をやってましたからね。だけど月日は流れ、いまはそうではないわけですから。そういう意味では、ぼくは許容されないことも覚悟して、でも武藤さんからお呼びがかかったからには、いまのプロレスファンに向けても、会場に詰めかけた昭和プロレスのクラシカルなファンに向けても「武藤とプロレス」というものを一生懸命しっかりとアピールしなければいけいないなと、正直思っていますよ。

――「部外者がリングに上がってはいけない」という考えの古舘さんが、今回「リング上での詩の朗読」を引き受けたのは、武藤さんからの依頼だということも大きいですか?

古舘 それは大きいですね。でも、武藤さんってあっけらかんとしてるから、いざ会ったときに俺が「武藤さん、呼んでくれてありがとう。がんばるから」って言っても、「いや、俺が呼んだんじゃないんですよ。ノアの誰かが古舘さんのことが好きでね」とか平気で言いそうだから、油断ならないと思って(笑)。まだぼく自身はこの件について武藤さんとまだ話してないわけだから、けっこう緊張感ありますよ。

――でも以前、今回とはまったく別の件で武藤さんにインタビューしたとき、「俺は巡業に出ていた時代の現役の猪木さんとリングで絡んでいるし、古舘さんに試合の実況もしてもらっている。その後の世代とは違うんだ」と言っていて、誇りに思われていたようでしたよ。

古舘 うわー、うれしいですね。武藤さんにはYouTubeの対談で何回か来ていただいてお話をしましたけど、そこまでの泣きそうになるような話は聞いたことがなかったんで。そんなことを言ってくれてすごいうれしいですね。ぼくが武藤さんの試合を実況したのは、スペースローンウルフのときですよね。

――だから武藤さんが最初に世に出たときの実況が古舘さんで、引退の最後に詩の朗読をするのも古舘さんということになるんですよね。

古舘 それはもう一生懸命やらせていただきますよ。ぼくもリングに上がるからには台本やカンペなんて持って上がれませんから。しっかりと暗記して務めさせていただきます。

写真/車谷悟史

【視聴する】武藤敬司引退試合 プロレス ”ラスト” LOVE~HOLD OUT~ | 新しい未来のテレビ | ABEMA
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