「元気な男の子が産まれました。この日を一生忘れません。少し大変な母の元に産まれてきてくれてありがとう」
生まれたばかりの赤ちゃんを抱き、安堵の表情を浮かべる女性、小澤綾子さん(40)。彼女は「筋ジストロフィー」という進行性の難病を患いながら、今年1月、第1子となる男の子を出産した。番組はそんな1児の母となった小澤さんを取材。いまの思いに迫った。
「症状が出てきたのは小学校4年生くらいで、自分では一生懸命走っているつもりだけど『走りにくいな』、周りのみんなから『歩くな』って言われるようになった。いろんなの病院を転々としたが、病名が分からなくて……」
20歳の頃、医師から告げられた病名は筋ジストロフィー。体の筋力が徐々に低下していく進行性の病気で、今も根本的な治療法は見つかっておらず、国の難病に指定されている。
病気の進行速度は人それぞれだが、小澤さんは7年ほど前から車いす生活を送ることに。
「歯磨きが最近辛くて、意外と歯ブラシが重いので、どんどん手が下がってきてしまうというか、手が上げられない。日常生活の小さなことだが、一つずつ出来なくなってきているという感じ」
病気と戦いながらも、歌手として活動していた小澤さんは、2014年に結婚。子どもを持つか持たないか、夫婦で悩み続けていた……。
「前から『子どもがいたら人生もっと違うかな』『子どもがいたらいいな』と思っていた。夫といろいろ話して、夫が『もし子どもに障がいがあった場合に、自分は支えきれないと思う』という話をしたりして、私も自分一人では育てられないので子どもを諦めていた。でもコロナ禍になって、夫と話し合うようになって、『やっぱり人生で子どもがいたら幸せだよね』という話をした」
そして2022年、念願かない第1子を妊娠。しかし、進行性の難病を抱えながらのマタニティライフは葛藤の連続だった。
「お風呂に一人で入ったりという当たり前のことが障がいがありながらもできていたが、妊娠してからは一人では難しくて。日常生活が大変になってしまったなと」
そんな小澤さんを支えたのが、家族の存在。夫が入浴を手伝ってくれるなど献身的なサポートがあったという。そして、迎えた今年の1月27日。小澤さんの下に、赤ちゃんが。医師の計らいもあり、経腟分娩での出産となった。
「帝王切開で産むのかなと思ったが、なるべく筋肉に負担がないようにするには、お腹を切るよりは下から産んだ方がいいと。お腹の上にこんなに小さな命を乗せる日が来るなんて思わなかったので感動でいっぱいだった」
今も日々の記録をSNSに投稿し続けている小澤さん。自らの経験を発信することで、同じように悩む人の背中を押せればと話す。
「自分はどうしたいのかというのをパートナーの方とよく話し合って、一つでも方法があるのであればチャレンジいただいて、新しい未来が切り開けたりするのかなと私の場合は思ったので、一つの参考にしていただけたら嬉しい」
この筋ジストロフィーの患者は、全国で約2万5400人。指定難病で根本的な治療法は発見されていない。これについて、番組コメンテーターでバイリンガル医師のニコラス・レニック氏は次のように話す。
「今の治療法は症状を一時的に抑えるもの。ただ、米国では間違えた遺伝子を是正するような治療法を研究段階で臨床試験が進行しているところなので、将来的には完全に治せる病気かもしれない」
筋ジストロフィーが親から子へ遺伝する可能性はあるのか、また男女差はあるのか。
「遺伝病なので親から子へ遺伝することもあるが、種類によって遺伝の仕組みが変わる。一般的な話をすると、間違いのある遺伝子と健康的な遺伝子を両方の親からもらえて、健康的なたんぱく質を半分の量でも作れたら、十分に筋肉が機能できる。親が病気だからといって100%子へ遺伝するとは限らない。また、男女差があるかについては一般的には男性に多い。というのも男性の染色体はXYで、(両親から)Xが一つしかもらえないので発症する」
では、筋ジストロフィーかどうか、何があったら疑ったらいいのか。
「やはり筋力低下で、典型的なのは腿の筋肉がまず弱くなることが特徴。立ち上がるときは腿の筋肉を一番使うのだが、それが出来なくなり、手で補おうとする。そんな特徴的な立ち上がりをGowers sign(ガーワズサイン)と呼んでいる。もし、子どもがこういう行動をするときには筋ジストロフィーを疑ったほうがいい。血液検査でわかるので、筋ジストロフィーの種類によって症状が異なるが、筋力が弱くなってると感じたらまずは受診して相談してほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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