3月に入り、厳しい寒さも残りわずか。とはいえまだ寒い夜もあり、「tenki.jp」が寒さや空気の乾燥具合から算出する「鍋もの指数」は低くはない日々です。
さて、稀代のグルメアニメ「美味しんぼ」で“鍋もの回”といえば、美味しそうな料理のみならず描かれる人間ドラマも一級品。関わる人々すべてが笑顔になった“福鍋”エピソードをご紹介します。
目次
- アツアツのぜいたく鍋焼きうどん
- 2つの食材が互いの欠点をカバーして引き立てる柳川鍋
- 社主の窮地を救った“アラ”違いの“アラ”鍋
- 身も心もほっこりする鍋もの
アツアツのぜいたく鍋焼きうどん
最初に取り上げるのは、第110話「年越しうどん」に登場する鍋焼きうどんです。
主人公の東西新聞記者・山岡士郎が同僚の栗田ゆう子、京極万太郎と寒い日に「岡星」で食事をしていた際に、店主が「こんな寒い日にはピッタリ」と出してくれたのは、アツアツの鍋焼きうどんでした。鴨の肉、海老の天ぷら、焼き穴子、松葉ガニなど、およそ鍋焼きうどんとは思えない豪華な具がのった鍋に驚いた京極は、スープを一口すすると「なんやてェ!!こりゃすっぽんのスープやないか」と驚きの声をあげます。うどんを一口すすった山岡は「ん!これはうまい!こんな贅沢な鍋焼きうどんは前代未聞だね」と絶賛しました。
この贅沢鍋焼きうどんが誕生したのも、昔たまたま来店した有名な食通が「これが鍋焼きうどんだというのか!!主(あるじ)!おぬしただ者ではないなぁ!」と大絶賛したから。その誕生の裏には店主の悲しい思い出がありましたが、事情を知った山岡たちのとりなしもあり、店主は一度は失った幸せをとりもどすことが出来たのでした。
2つの食材が互いの欠点をカバーして引き立てる柳川鍋
続いては、第52話「ぼけとつっこみ」に登場する柳川鍋をみていきましょう。
のどかな田舎の料理屋でどじょうの塩焼きと一緒に“どじょう鍋”と“柳川鍋”を食べた山岡たち。どじょうの塩焼き&どじょう鍋はいい部分もあるものの完全においしいとは言い切れない欠点がありましたが、どじょうとごぼうに卵を加えた柳川鍋は文句なしの出来ばえでした。どじょうとごぼうはどちらも泥臭い食材ですが、2つが合わさることで上手くお互いの欠点をカバーしていたのです。ごぼうによってどじょうの良さが最も引き立てられている柳川鍋は、「美味い!」「今日のお料理の中でこれが1番」と全員がおいしさを認めていました。
山岡は2つの具材がマッチしている“柳川鍋”を例に、人気漫才コンビを解散して落ちぶれた山坂すべっ太を励まします。果たして柳川鍋は、すべっ太の心にどれほど影響を及ぼしたのでしょうか。
社主の窮地を救った“アラ”違いの“アラ”鍋
最後にご紹介するのは、魚の“アラ”を使った鍋が登場する、第14話「横綱の好物」です。
横綱を招いた激励会で“アラ鍋”をリクエストされた東西新聞社の大原社主。しかし、社主が“アラ”違いの勘違いをしていることに気づいた山岡は人間より大きな“アラ”という名前の魚を用意し、相撲茶屋の大将の技でアラを解体するところからお披露目。切ったアラと野菜やキノコなどを入れた鍋を皆にふるまいます。
鍋には魚の目玉が入っているなど、ややグロテスクな見た目ですが、味は絶品。「おっ!この目玉の旨さ!とろりとして豊かな味」「まぁぁ~!魚の唇がこんなにおいしいなんて!ぷりぷりとしていて甘みがあって」と絶賛されていました。ちなみにアラとは九州の呼び名で、全国的にはクエとして知られいる魚。作中では山岡が「ハタの仲間で、博多では“アラ”の鍋はふぐちりより美味しいと言われています」と紹介しています。
しかし、この“アラ”鍋にたどり着くまでには、大原社主が危うく恥をかきそうになった“アラ”違いのトラブルが。横綱に満足してもらえる鍋ができる過程も必見です。
身も心もほっこりする鍋もの
「美味しんぼ」は登場する究極のメニューや至高のメニューも魅力的ですが、描かれる人間ドラマも絶品。温かく複数人で囲める鍋料理の回は、話も温かいものが多いように思われます。 最近鍋ものを食べていないという人は、ぜひ誰かと一緒に鍋をつついてみるのもいいと思いますよ!