「戦争を長引かせているのは世界だ」ウクライナ侵攻から1年…警報音が鳴り響く首都キーウの今
【映像】バイデン大統領来訪中も鳴り響く警報音
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 ロシアのウクライナ侵攻が始まって24日でちょうど1年。戦況が長引き、終結の光が見えないまま、双方で32万人以上が亡くなったとの推計もある。戦場のウクライナはどんな現状なのか。首都キーウに住むパルホメンコ・ボグダンさんに話を聞いた。

【映像】バイデン大統領来訪中も鳴り響く警報音

「キーウは、比較的“日常の一コマ”が見えるような生活にはなっている。だが、この比較的安全・日常は、日本の安全・日常とは全く違う。戦争が続いていて、いつ着弾があるのか、いつ攻撃があるかわからない中で生活を続ける必要がある」(パルホメンコ・ボグダンさん)

 侵攻当初に比べて、キーウの街は落ち着きを取り戻しているものの、警報音とともに生活しているという。バイデン大統領がキーウを訪れたときも、警報の鳴る中で視察を行っていた。

「(警報について)恐怖したまま1年間は過ごせない。ある程度大きなストレスの1つ」

 恐怖心は薄れていくものの、警報音が鳴り響く日常や終わりの見えない戦闘でストレスが溜まっていく日々。攻撃を受けて亡くなる方がいるのはもちろんだが、ストレスが原因で亡くなる方も後を絶たないという。

 長引く戦闘の中、終戦に向けての動きはあるのだろうか。ボクダンさんは「長引かせているのはウクライナではなく世界だ」と訴える。

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 「ウクライナが終戦に向けて動くのではなく、世界が動くかということだ。今でも『戦闘機いつ出すんだ』『長距離ミサイルいつ出すんだ』と話している。1000キロ飛行するミサイル兵器がウクライナに提供されれば、すぐにモスクワを攻撃して終わるだろう。我々が一番、停戦ではなく終戦を望んでいる。ただそれは、我々がいくら望んでも世界が求めない限りないだろう。もう、ロシアは(停戦・終戦を)判断できないのではないか。世界が動くまで停戦・終戦はないと思う」

 まだまだ続いていく様相のウクライナ侵攻。20日に岸田総理はウクライナへ約7300億円の支援を表明したが、「財政支援以外にも日本には望むものがある」とボグダンさんはいう。

「日本は『兵器を提供できない』『軍事介入できない』として何もしないままだった。最初の100億円、数日前の7000億円(の財政支援)は出たが、それ以外にも自衛隊を派遣してガレキ作業の撤去や人命救助、仮設住宅の設置、移動式のお風呂やトイレ、そして、“医療車”日本の会社に来る人間ドック用の車や医療部隊を提供してほしい。これは、軍事介入でもなければ戦争に参加することでもない。日本にもできるのではないか」

 なぜ、ロシアはウクライナ侵攻をする決断に至ったのだろうか。『ABEMAヒルズ』に出演した「探究学舎」の探究ファシリテーター・木元隆雄氏は「過去の様々な軍事侵攻による“楽観的な見通し”があったのではないか」と指摘する。

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「シリアへの軍事介入、あるいはチェチェン紛争への軍事介入やジョージアの侵攻は、非難は受けたけれども大きな歯止めはかけられなかった。プーチン大統領的にはそれが成功体験になってしまい、今回のウクライナ侵攻も“短期間で決着できれば大きな批判は来ない”と甘い見立てを持ってしまったのではないか」

 また、木元氏は「ウクライナが頑強に抵抗したことで、国際社会はロシアの想定以上に強い非難を向けた。経済的な制裁も受け、ロシア経済はかなりの混乱状態にあるだろう」と述べ、ロシアが侵攻に至った理由を次のように分析した。

「特別軍事作戦開始時のプーチン大統領のビデオ演説などを見ると、『元々ロシアとウクライナは同じ民族である』『1つにまとまるべきなのに、ウクライナがヨーロッパ寄りの姿勢を取っている』と言っていた。“非ナチ化”などの言葉で侵攻を正当化している」

 その上で、木元氏は「今のロシアは民主主義国家として健全とは言い難い状況だ」と話す。

「アーネスト・ゲルナーという社会学者が、ナショナリズムについて『政治的な単位と民族的な単位が一致しなければならないと主張する、一つの政治的原理である』という言葉を残している。これをプーチン大統領は、ウクライナへの侵攻という形で示した。独裁的な指導者の“歴史観・民族観”が大きな惨事を招いてしまった1つの例だ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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