行き場のない少年少女たちが集まる新宿・東宝ビル横の広場、通称「トー横」。そこで今、新たな問題が起きているという。2021年10月から取材を続ける『ABEMA的ニュースショー』の寺見佑弥ディレクターが追った。
寺見ディレクターが取材を通して出会ったのは、「ハウル」と名乗り、少年少女にボランティアで炊き出しなどを行う団体「歌舞伎町卍会」代表の小川雅朝氏。トー横に集まる少年少女を救いたいとする熱い思いや、その活動を見つめてきた。
しかし、16歳の少女にみだらな行為をした疑いで、小川氏は2022年6月に逮捕。その5カ月後、東京拘置所内で体調が急変し、死亡した。寺見ディレクターは小川氏の彼女だったという女性に直接会い、出所してからの日々に期待する手紙を見せてもらっていた。
その後、歌舞伎町卍会は解散し、トー横は“何でもあり”の無法地帯になっているという。
「統制をとる人間がいなくなり、一般常識がない子が増えた」(トー横の男性)
そんな中、新たに浮上した問題。スマホで撮影された動画に映っているのは、両手と両足に痙攣を起こし、道路に倒れ込んでいる未成年の少女。苦しそうな様子だが、周りの人は毛布をかけるだけで、慌てている様子は感じられない。
「市販薬を飲んでハイテンションになっちゃう系」(トー横の40代男性)
身近に売られているかぜ薬などの市販薬を過剰摂取する「オーバードーズ」。大量に飲むと一部の成分によって気分が高まり、精神的な苦痛が忘れられるという。トー横では今、オーバードーズで倒れ込む若者が相次いでいるというのだ。
オーバードーズをした別の未成年の少女は、呂律が回っておらず、意識がもうろうとした状態。ただひたすら「お疲れさまです」と繰り返すのみだ。
「やっているのは中学生から高校生。20歳超えてからやってるのは聞いたことがない」(トー横の男女)
「初心者は20錠。ちょっと(経験が)入ると60~80錠。1回で」(前出の40代男性)
体が慣れて物足りないと感じると、いろいろな市販薬を同時に飲むこともあるという。
警察官に話しかけられている未成年の少年。上にあげた左の手首からは血が滴り落ち、地面にまで広がっている。オーバードーズをした後、リストカットしたのだ。幸い命に別状はなかった。
少年少女らはなぜ自分を傷つけてまでオーバードーズをしてしまうのか。
「現実逃避が一番の理由じゃないか。家庭環境が複雑な子どもたちが多く、オーバードーズをすることで仲間を増やすような意味合いがある」(トー横の女性)
市販薬を使ったオーバードーズについて、精神科医の片田珠美氏は「処方薬以上に簡単に入手でき、罪悪感を覚えずにやってしまう方が多いように思う。大量に服薬すると、場合によっては呼吸が止まって命に危険が及ぶ。これは薬物依存だ」と警鐘を鳴らす。
薬には治療を目的とする作用のほかに副作用も存在する。定められた用法・用量を守らないと体への悪影響が懸念される。
今回の取材から見えたこととして、寺見ディレクターは次のように語った。
「1つはSNSでオーバードーズの動画や写真を投稿する、飲んだ量を自慢し合う行為が流行ってしまっていること。トー横に来る人も生きづらさを感じていて、記憶を飛ばしたいという思いからそういった行為に走っている。もう1つ、仲間に入るためのコミュニケーションの手段としてオーバードーズを選んでいて、本当に軽はずみにやっていることに驚いた。誰かと繋がりたいと思って来て、“自分はここにいる”“助けてほしい”という自己主張のためにやっている。それはすごく危険だし、悲しいことだと感じる」
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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