「政治にも報道協定を」岸田総理のキーウ“極秘訪問”は可能か? 元外交官&記者と議論
【映像】岸田総理キーウ訪問 “極秘”可能?「知る権利と国家機密」元外交官&記者と議論
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 先月20日、大きな話題になったアメリカ・バイデン大統領のキーウ電撃訪問。実はこのとき、訪問日はもちろん、フライト時間など、全ての情報が外部へ漏れないよう計画が進められていた。

【映像】実は知られてない? 憲法に定められた「秘密会」とは(画像あり)

 一方の日本はというと、1月、一部メディアが岸田総理のキーウ訪問に関する情報を報道。これにTwitterでは「マスコミが報じるせいで訪問できないんじゃない?」「報道の自由もあるから政府の情報管理を徹底しなよ」といった声があがった。

 総理を含む閣僚の海外訪問については、国会での事前了承が慣例だ。一方、安全確保の観点から、与野党では事後の了承を認める動きもある。

 今後、岸田総理は極秘でウクライナに行けるのだろうか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、元外交官で内閣官房参与を務める宮家邦彦氏は「普通の国であれば行ける」と話す。

「政府の関係者、マスコミ、さらに議会等も含めて、知る立場にある人が知らされて、その秘密が守られるなら行ける。普通の国だったら、みんなそれをやっている。逆にいうと、それができないなら、訪問はできない」

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 その上で、宮家氏は「ヘンリー・キッシンジャー(※元アメリカ合衆国国務長官)が1970年代に『日本の政治家には秘密を守る権利がない』と言ったが、本当にその通りだ」と指摘する。

「オフレコが守られない。アメリカでオフレコを破ったら、その段階でホワイトハウスに入れなくなる。そのくらいジャーナリストとしての倫理が厳しい。ごく一部の人だと思うが、オフレコを守れない人がいる限り、なかなか協定を結べない。日本がやれるのかどうか、誰が責任を持つかを含めて、真剣に考える時期に来ている。いい機会だと思う」

 実際にメディアが1月の時点で2月の訪問案を報じたことについて、現場の記者はどう思っているのか。

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 政治記者として25年以上のキャリアを持ち、元日本テレビ官邸キャップの政治ジャーナリスト・青山和弘氏は「報じて当然だと思う。メディアが書いたことは全く問題ない」と話す。

「知っている人が漏らさなければ極秘で行ける。漏れたら報道される。我々は知った事実を報道するのが基本だからだ。ただ、政府側から『報道しないでほしい』と言われて協定を結ぶのは、不可能ではないと思う。アメリカのバイデン大統領も記者2人を連れて行ったが、事前に報道しない約束をちゃんと結んで行っている」

「過去を見ても、政治の報道協定は例がない。例えば誘拐事件だったら『誘拐された人の命のために報道しない』という報道協定をやったことはある。これが政治でも適用できる。ただ、日本の場合、こういう情報は漏れやすい。あと、日本の総理大臣の周りにはいつも記者がいるので、バレやすい。飛行機も専用機が羽田空港から出る。羽田空港から政府専用機が飛び立てば『これは何だ』となる。アメリカは空軍基地から出るので、分からない」

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 もし、青山氏が同行記者として誘われていたらどうしたのか。

「ついて行く。『報じない』という握りは当然あり得るべきだと思う。だから報道の技として『決められた日までは報じないので、その代わりに準備をさせてほしい』という握りをする。同行記者ではない形で知ってしまったら、もちろん事前に報じる。その事実を隠す理由はない。握っていないからだ」

 事前に報じることで、総理大臣が危険に晒される可能性もある。青山氏は「基本的には報じるのが筋だが、確実に命の危険があるのであれば、考えないといけない。政府側の行動が国益に反するのか、反しないのかも含めて、世に問う必要はある」と答える。

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 青山氏の答えに、宮家氏も「オフレコがかかってなければ報じて当然だ」と同意。動画や電話ではなく、実際に総理大臣がウクライナに行く意味はあるのだろうか。

 宮家氏は「G7みんなそうだが、日本としても、厳しく正しいメッセージをロシアに対して送るのは、抑止力にもなる」とコメント。

「ウクライナが国際法違反で侵略をされて、多くの人が亡くなっている。力による現状変更がやすやすとヨーロッパで行われているのに、何のお咎めも制約もないと、同じようなことが中東やインド太平洋地域で起こりかねない。ロシアと同じように力によって現状変更したいと考える国や独裁者もいる。その人たちに間違ったメッセージを送ることになってしまう」

 その上で、宮家氏は「岸田総理はウクライナに行った方がいい」と断言する。

「日本の政治家に『秘密を守る権利』をあげる。それが今の日本にとって重要。もちろんメディアが知る権利、報道・言論の自由も大事だ。しかし、政治家にも意思決定者にも秘密を守る権利を与えてほしい。それによって新しい日本が生まれていくと思う」

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 青山氏は「岸田総理目線で考えると、G7の結束を見せたい」と見解を語る。

「日本はG7の議長国なので、岸田総理としては自分が行って見てもいないのに議長をやれないと思っている。また、日本は防衛費を倍にして、それに税金を使っている。実際に攻撃を受けている国に行くことで、日本の国民に対して理解を求めやすくなる。選挙がちらつく中で、自分の発言に説得力を持たせたいのも、間違いなく理由としてある。行く・行かないこと自体が、日本の総理大臣にとって初めての経験だ。いろいろな意味で、歴史の転換点にきている」

(「ABEMA Prime」より)

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