渋谷区の公衆トイレ“女性用→共用化”に相次ぐ批判…犯罪リスクは? 専門家「1つのチャレンジとして受け止めて」
【映像】新時代のトイレ論 “女性用→共用” 変更 渋谷区に批判
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 先月完成した東京・渋谷区の公衆トイレに注目が集まっている。レイアウトをみると、女性専用トイレがなく男性用小便器が2つ、共用トイレ(個室)が2つとなっている。

【映像】入口せまっ! リニューアル前の公衆トイレ(画像あり)

 これにTwitterでは「なぜ女子トイレがないのか」と批判の声が殺到。物議を醸している。

 専門家はこの状況をどう見ているのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、トイレ研究家の白倉雅子氏はこう話す。

「中には『女性用トイレがなくなった』と危機感を訴える声もあるが、区はそういうつもりではなかったと思う。全ての方になるべく使いやすいトイレを提供しようとした結果、 女性用トイレがなかっただけではないか。渋谷区のトイレはこの1箇所ではないので、誤解しないほうがいいと思う」

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 騒動を受け、区はコメントを発表。「ダイバーシティを受け入れる社会の推進を図る」とした上で、共用トイレの機能を充実させることを優先し、性別に関わらず誰もが快適に利用できる環境を目指したという。また、女性トイレをなくす方向性は「全くない」としている。

 白倉氏は「SDGsの目標に『安全な水とトイレを世界中に』がある。今までトイレのことはなかなか注目されなかった。すごく急に注目が上がって、今までトイレに対しての不満や疑問を持っていた人が、噴き出すようにコメント出し始めてきた」と話す。

 渋谷区は2020年8月から「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトを進め、建築家16人が参画。区内の公衆トイレ17カ所を再設計し、整備している。また、現時点で、少なくとも5カ所は女性専用のトイレがないという。

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 この取り組みに、白倉氏は「同姓のパートナーシップを認めているので、渋谷区はそういう人たちが集まりやすくなっている。日本の中でもその最先端をいっていると思う。『みんなが使えるトイレ』を考えた結果、たどり着いたレイアウトなのではないか。これが“答え”というよりも、1つのチャレンジとして受け止めたほうがいい」と見解を語る。

「私たちもいいトイレを作りたいから、いろいろな人の意見を聞こうとする。逆にいうと、意見同士がぶつかってしまって、1個のトイレで全てを叶えるのはとてもできない。最近は高齢化も進んで、働く女性も増えている。男性と女性、みんなで街や社会を作っていこうとなっている。ジェンダー問題を緩めて考えていけたらいいと思う」

 フリーアナウンサーの柴田阿弥も「時代の流れに合わせて、公共施設を作り変えていくことはすごく大事だ」と話す。一方で「セキュリティの甘さが気になる」と指摘する。

「公共トイレは人目も少なく、性犯罪が起こりやすい場所と言われている。カフェで、共用トイレを利用したとき、出たときに男性が待っていて『怖いな』と思った。それ以来、共用トイレしかないカフェなどにはあまり行かないようにしている。商業施設はまだ人の目があるが、セキュリティが甘いと性犯罪や盗撮などのリスクは、さらに高くなるのではないか。元来、女性は性被害に遭いやすい。マイナスを0にするという考えを頭に入れて、施設を作ってほしい。前提として誰もが利用しやすくするのは大事だが、誰かの安全や権利を奪うやり方では相互理解は進まないと思う」

 渋谷区公園課では、ネット上に寄せられた「男性が入っていたら怖くて使えない」「個室に入るのが丸見えだから待ち伏せされそう」といった声に「重要な点だと思い、受け止める」とコメントを発表。「防犯対策として公衆トイレ回りの防犯カメラ設置も進めている」としている。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「設計したチームの方々のお話を聞くと、1番のポイントは共用部分の手前にスペースを作ったところだと言っていた。地域住民の人たちが集まって交流を深められるような場所にしたいという意味が込められている」と話す。

「一方で、警視庁が出している東京23区の犯罪発生率を見ると、ワースト5に渋谷区が入る。当然、地域住民としては犯罪が発生しないかどうかが気になる。ファクトを示してから、渋谷区独自の取り組みとして『犯罪発生率を減らすためにトイレ改革をやります』と言ってほしい。個室トイレの数よりも、ある意味、まちづくりを渋谷区が本気でやりきれるかどうかだ」

(「ABEMA Prime」より)

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