7日、京都市の小学校教師の男が全国都道府県対抗女子駅伝で選手の下半身を執ように撮影したとして、書類送検された。男は走り終えて倒れ込む選手など、競技とは直接関係ない場面を撮影。盗撮を警戒していた警察に任意の捜査を受けていた。男性教師は「自分の性欲を満たすためにやった」と容疑を認めている。
【映像】「下半身を執拗に」現場で撮影された“性的写真”(イメージ図)
たびたび問題となっている性的意図によるアスリートの撮影に、スポーツ界も以前から声を上げている。2020年11月、文部科学省で日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は「アスリートへの動画写真による性的ハラスメント、このような卑劣な行為の撲滅に取り組んでいく」とコメント。法務省も性的意図を持った盗撮の防止、処罰のため、法制審議会で「撮影罪」を新設した要綱をまとめ、性犯罪規定の見直しを進めている。
一方で、「撮影罪」は性的な部位やわいせつ行為の盗撮が対象で、競技中のアスリートの撮影は想定されていない。撮影と拡散が当たり前になった時代に、ルールやマナーはどうあるべきか。「ABEMA Prime」では、専門家とともに考えた。
撮影をめぐるトラブルや対策に詳しい三平聡史弁護士は「検挙に踏み切ったのは、回数が多く、期間も長いので、まともとは言えないかなり異常な状態だったからだろう」とコメント。「逆に言えば、真面目に競技として撮影していた人が間違えられて、違法だと言われてしまう可能性もある。境界がちょっと難しい」と見解を語る。
プロスケーター、元フィギュア世界女王の安藤美姫氏は「競技によって特徴が違う」とした上で「マラソンなら走る姿が美しい競技だ。それ以外のどこかにフォーカスされているのは、絶対に私はアウトだと思う」と答える。
「フィギュアスケートの競技会は、一般の方々の撮影や音楽の録音は禁止されているので少し違う。今はメディアも規制されていて、成人男性向けの雑誌媒体の立ち入りは禁止されている。私が現役の頃は禁止されていなかったので、誰でもカメラマンとして入れた」
10代の頃から「成人雑誌に載せられていた」と振り返る安藤氏。
「正直、私は今も、誰かがカメラを触っているだけで、恐怖でしかないぐらいトラウマだ。ただ、これは女性アスリートに限らないと思う。男性アスリートの女性ファンにも、同じことが言えるのではないか」
問題になった駅伝大会では以前、10代の女性選手がファンや報道陣からカメラを向けられたり、SNSに写真をアップされたりすることが不安だと訴え、出場を辞退したこともあったという。
その上で、安藤氏は「競技によって、規制の手法を考えるべきだ」と指摘する。
「マラソンに関しては規模が大きいし、例えば『立ち見区間』みたいなものを作れないか。ロープで仕切って『ここは立ち見OKですよ。その代わり写真を撮る人はチケット代を払ってください』と。隔離ぐらいはできると思う。どれだけ規制しても訴えても、撮る人は撮る。でもそういう方たちばかりではない。連盟や関係者が、選手が声をあげる前に少しずつ変えていってほしい」
安藤氏の意見に、三平氏は「会場を設営している場合は、どうやったらスポーツが盛り上がるか考えてルールを作ることになる。その場合は、法律的な問題よりも、入場する条件をどのように設定するか考えたほうがいい。一方で、公道の場合は別で、少なくとも一般の公道にいる人の撮影はストレートに禁止できない。禁止できるのは、迷惑防止条例に違反する、いわゆる性的目的の撮影など、特定の撮影方法だ。どうしても運営団体と関係ない自治体や国のルールになってしまう」と話す。
法制審議会では新たに撮影罪を作ることが検討されている。しかし、性的な部位やわいせつ行為の盗撮が処罰の対象となり、競技中のアスリートの撮影は想定されていない。ジャーナリストの堀潤氏は「性的な表現とその他の表現の線引きを一回考えた方がいい」と指摘する。
「どうしても表現規制につながる入口は生まれる。個人の表現の領域にもかかわってくる話なので『コンセンサスを作っていきましょう』としっかりやるべきだ。引きの映像で撮っていても、拡大するとかなりきれいに映るのが今のカメラだ。今は1億総カメラマンだと思ったほうがいい。どこかにフォーカスを当てると、法の抜け穴を作るだけになってしまう。抜け落ちているのは、同意の話だ。明らかに『私は嫌です。撮影しないでください』と主張しているのであれば、写真が流通した瞬間、全部アウトだと思う」
その上で、堀氏は「ユニフォームやゼッケンに『撮影NGマーク』のようなものを付けられないか」と提案する。
「例えば観客や周りの人が見ていて、明らかにカメラを選手に向けている。でも選手は『NGマーク』をつけている。周りが『お前、何やってんだよ』と言うきっかけになる。監視の目が広がると思う」
三平氏は「NGマークはいいアイディアだと思う」と話す。
「著作権の分野では、特定の共通マークつけた成功事例がある。例えば、選手がNGマークをつけていれば、調査機関もAIなどを使って違法画像を探しやすくなる。テクノロジーを使って抑止に繋がる可能性も十分ある」
(「ABEMA Prime」より)
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