3月11日、東日本大震災の被災者や犠牲者を侮辱するような動画がTwitterに投稿された。動画はすぐさま炎上、投稿者が高校生と特定され、高校側が謝罪する事態になった。
SNSで動画が拡散され、炎上する一連の背景には“インフルエンサー”の存在がある。今年に入り、飲食店で不適切な行為をした動画などが次々と拡散され炎上した。「倫理感が欠如している」「重い罰を科すべき」など批判の声がある一方で、投稿者の学校や職場などの個人情報が晒され「誹謗中傷を助長しているのでは?」と疑問視する声もある。
誰もが情報を発信できる今、不適切動画の拡散は誰のためなのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、拡散する側の責任について議論を行った。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「拡散という言葉を使うからみんな誤解する」と指摘する。
「インフルエンサーと言われる人も主体だ。誰かが公開した動画データを自分の手元に置いて、それをアップロードし直している。法律上、主体として誰かを傷つけたり、迷惑を被るような動画を公開しているから、責任を負うのは当然だと思う。リツイートボタンも『押しただけだから責任はない』という裁判があった。でも、それは自分のフォロワー全員に通知する行為だと分かって押したから、拡散した人は責任を負う。そういう判断を東京高裁がしているので、法律上は答えが決まっている」
e-sportsの実況などの活動を行うライターのばしこ氏は「動画を拡散する側にも問題がある」と指摘する。
「拡散には何の正当性もない。拡散する前に何かしらの正規ルートを通せばいい。例えば、高校生なら、学校に粛々と報告をして、内々で処理してもらえばいい。わざわざ拡散に頼る意味が全くもってない。学校が聞いてくれなくて、誰かが困っているときに『誰も聞いてくれません。助けてください』と拡散するなら、まだ筋は通っていると思う。いきなり学校の公式アカウントにリプライを送って『こんにちは。これどう思いますか』と言っているのは、明らかに炎上を狙っている。法に触れる触れない以前に、拡散する意味がないと僕は思う」
自身の「主観」とした上で、今のTwitterの状況について「拡散を狙うアカウントがあまりにも増えて、過熱しすぎている」と話すばしこ氏。Twitter社側には、リツイートに対して規制する考えはないのだろうか。
ひろゆき氏は「チャイルドポルノだと瞬時に消されることがある。そういう意味では本当に消さなきゃいけないものは、Twitter社はちゃんと消していると思う。それなりにページビューが増えていて『これは問題ないよね』というものが、残されている状況だと思う。個人情報を投稿した人は、捜査で本当に捕まる可能性もある。ただ、逮捕して有罪になるほどの話ではない。せいぜい注意されて終わりだ」と見解を語る。
ネット犯罪に詳しい深澤諭史弁護士によると「適法だが不適切・けしからん動画」の場合、投稿主自らがアップしていても「他人による公開(拡散)までは認めていない」という。その上で「投稿主にとって不名誉な事実の公開」として、拡散が名誉毀損に当たる可能性はあると話す。
ばしこ氏は「具体名は避けるがタレコミを募集するインフルエンサーはたくさんいる。そこにみんなが群がっている」と指摘する。
一方、ひろゆき氏は「僕も一応インフルエンサーの枠には入ると思うが、未成年がやらかしたものを取りあげることが正義なのかは、ちょっと分からない。メディアは、儲けたほうが良いから、何か話題になってPVや視聴率が取れそうなものは取り上げる。僕も10代の頃はひどいことをしていた。当時はスマホなんてなかったから、今のうのうと生きてられるが、スマホがあったら普通に警察に捕まっていると思う」とコメント。
その上で、ひろゆき氏は「誰かが自殺する事態になって、初めて日本社会は変わるんじゃないか」と見解を述べる。
「Yahoo!ニュースで何か一言言いたくなるようなものが公開されると、コメント数やページビューが増えて儲かる構造にある。『この人悪いよね』とみんな寄ってたかって叩くが、未成年が自殺したら、日本も多少は制限するんじゃないか。結局、今回の子どもが『そこまで悪いことした?』という話だ。でも『悪いことをしたから、攻撃してもいい』と思う人が世の中にいっぱいいる。そういう人が好むようなニュースを書くと、儲かるメディアがある。その構造を変えるには『炎上してみんなが攻撃したことで、もっと大変なことが起きました』にならないと、変わらないと思う」
ひろゆき氏は過去に恋愛リアリティーショーに出演していた女性がSNS上の誹謗中傷をきっかけに命を絶ったことに触れた上で「被害者が出てから、過激系のリアリティーショーがなくなった。やっぱり何か事件が起こると、いくら需要があったとしても、作る側も変わるんじゃないかなと思う」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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