サッカー界は非情な場所であり、特に監督は、少し結果が出なかっただけで、すぐにクビを切られる可能性があるポジションだ。そのため、見事な経歴を持ちながらも、フリーという立場に甘んじている監督も多い。そこで今回は現在フリーとなっている主な名将たちを紹介する。
[写真]=Getty Images
■ジネディーヌ・ジダン
2021年5月にレアル・マドリードの監督を退任して以来、フリーの状態が続いているジダン。長きにわたり、フランス代表指揮官の座を狙っていると報道され、半ば“公然の秘密”状態となっていたが、レ・ブルーは1月にディディエ・デシャン監督と2026年まで契約を延長したことを発表。近々の代表監督就任はなくなってしまった。
2度のレアル・マドリードでの政権で、チャンピオンズリーグ(CL)3連覇を含む11のタイトルを獲得しているジダンには多くの関心が寄せられており、チェルシーや、母国のパリ・サンジェルマン、古巣のユヴェントスが招へいを考えているようだ。ただし、ジダンはシーズン途中の監督就任は考えていないようで、現場復帰が叶うのは早くても夏になるだろう。
■ルイス・エンリケ
FIFAワールドカップカタール2022でスペイン代表を指揮しながら、大会期間中に『Twitch』で生配信を行うという前代未聞の試みでファンを楽しませたルイス・エンリケ。配信では、チームの様子やプライベートなことまで様々なことを赤裸々に語り、好評を博していたが、チームがラウンド16敗退となったことを受け、大会終了後に退任が発表された。
優勝候補だったスペインにとって、ラウンド16敗退は十分ではなかったかもしれないが、ローマ、セルタ、バルセロナを率いてきた指揮官のことを高く評価するチームは多いようだ。招へいの噂があるのはトッテナム、アトレティコ・マドリード、チェルシーなど。まだ52歳のスペイン人指揮官も、このまま終わるつもりはないだろう。
■トーマス・トゥヘル
チェルシーのトッド・ベーリー共同オーナーによる最初の“犠牲者”となったトゥへル。マインツやドルトムント、パリ・サンジェルマンを経て、2020-21シーズン途中にチェルシーにやってくると、就任当初は8位だったチームを4位に導き、9シーズンぶり2度目のCL制覇も達成したトゥヘルは、サポーターからの人気も高く、いまだに解任を疑問視する人も多い。
トゥヘルの招へいを目指していると言われるのが、ロンドンのライバルであるトッテナム。その他にもレアル・マドリード、ミランといった錚々たるクラブが興味を持っていると報道されているが、ユリアン・ナーゲルスマン監督解任に動いているバイエルンが後任としてトゥヘルと合意したことが23日に複数メディアで報じられており、現場復帰はもはや時間の問題となっている。
■マウリシオ・ポチェッティーノ
2022年夏にパリ・サンジェルマンの監督を解任されて以降、多くのクラブとの繋がりが報じられてきたポチェッティーノだが、現場復帰には至っていない。パリでのキャリアは華々しいものとは言えないが、それでも2021-22シーズンのリーグ・アン優勝など、国内の計3タイトル(21-22リーグ・アン、20-21フランス杯、20-21フランス・スーパーカップ)獲得を実現している。
サウサンプトン、トッテナムで魅力的なチームを作った実績から、イングランドでの評価はいまだに高く、直近ではアントニオ・コンテ監督の将来が不透明となっているトッテナムへの帰還が頻繁に取り沙汰されている。なお、それ以外にもチェルシー、イングランド代表、レアル・マドリードなどもアルゼンチン人指揮官に関心を抱いていると言われている。
■マルセロ・ガジャルド
“次にヨーロッパに来る大物”として広く認知されているのがガジャルドだ。2014年6月から8年半、リーベル・プレートを率い、2度のコパ・リベルタドーレス制覇など、様々なタイトルを獲得。そんなガジャルドに対しては、ジョゼップ・グアルディオラ監督も2020年に「彼がリーベルで成し遂げたことは信じられないこと。毎年、3人の監督がFIFAの最優秀監督にノミネートされるが、彼がそこに一度も入らないことが理解できない」と高い評価を口にしている。
2022年11月にリーベルの監督を退任したガジャルドには、リーズが熱心に招へいを目指していたが、結局は実現せず。ガジャルドはプレシーズンからチームを作りたいと考えており、それに加えて、ヨーロッパのコンペティションに出場するチームでの指揮を望んでいるという。招へいの噂があるのは、アヤックス、アトレティコ・マドリード、パリ・サンジェルマンなどだ。
■ラファエル・ベニテス
2021年夏に懐疑の目を向けられつつエヴァートンの監督に就任し、半年で解任されたベニテス。それ以降、フリーの状態が続いているが、リヴァプール、インテル、チェルシー、ナポリ、レアル・マドリード、ニューカッスルといったクラブを率いた豪華な経歴を持つ監督は、世界を探しても何人もいるものではない。
ベニテスに対してはデイヴィッド・モイーズ監督の立場が怪しくなっていると伝えられるウェストハム、監督経験の少ないルベン・セジェスのもとで残留争いを戦うサウサンプトン、古巣バレンシアが招へいを考えていると言われている。
■ヨアヒム・レーヴ
2021年7月、EURO2020を最後にドイツ代表監督を退任したレーヴ。2004年夏に代表のアシスタントコーチとなり、2006年7月に監督に就任したレーヴにとって、最後にクラブの指揮を執ったのは2003-04のオーストリア・ウィーンまで遡る。
レーヴはドイツメディア『スカイ』やドイツ誌『キッカー』に対し、現場復帰を望んでいる趣旨の発言をしており、2022年10月にも古巣シュトゥットガルトからのアドバイザー就任の話を「監督業に拘るため」断ったと報道されている。ドイツ代表で15年の長期政権を築いたレーヴにはブンデスリーガやMLSのクラブが興味を持っていると言われているが…?
■チッチ
30年を超える監督キャリアで14のチームを指揮してきたチッチ。その集大成とも言えたのが、直近のブラジル代表の監督で、2016年6月に就任し、コパ・アメリカ2019では優勝を果たすも、ワールドカップでは苦戦。ロシア大会、カタール大会でともにベスト8で敗退し、カタール大会終了後にその座を引くこととなった。
チッチが今後も監督業を続けていくかは不明だが、本人にその気があるのなら、欲しいチームは多くあるだろう。就任が噂されているのはブラジルのクラブや代表チームなどだ。61歳の指揮官の今後に注目が集まる。
■マルセロ・ビエルサ
リーズをプレミアリーグに昇格させ、ファンからの人気も高かったビエルサだったが、2021-22シーズンは苦戦が続き、2022年2月に解任。アンドレア・ラドリッツァーニ会長も「私が在任中にしなければならなかった最も厳しい決断だった」と苦しい胸中を明かした。
それ以降、フリーの状態が続いているビエルサだが、その攻撃的なスタイルから人気は高く、ボーンマス、アストン・ヴィラ、サウサンプトン、エヴァートン、クリスタル・パレスなど、今シーズン監督を解任したほとんどチームの後任候補にその名前が挙がった。監督に就任する際は、クラブだけでなく、街自体の雰囲気などもしっかりと評価するというビエルサ。次に“エル・ロコ”のお眼鏡にかなうのは、どこのクラブだろうか。
(記事/Footmedia)