小学生が放課後を安全に過ごすことができる「学童保育」。共働き家庭の増加で、学童保育の待機児童問題に注目が集まっている。
保育園の“待機児童問題”は、「保育園落ちた 日本死ね!!」という匿名のブログから端を発し、注目された。
ブログ発信から7年経った2023年、SNSで「学童落ちた。いい加減にしろよ」「公立学童落ちたとかwwww 何が『お母さん、我々はいつでも味方ですよ』だよwww国なんてクソくらえよ」といった「学童落ちた」の声が相次いでいる。
厚生労働省の調査では、2022年5月時点の学童待機児童数は1万5180人。さらに申し込みを諦めた潜在的な学童待機児童も30〜40万人もいると言われている。
一体なぜそのような事態になっているのか。アフタースクール事業の運営を行う、放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さんに話を聞いた。
「学童をつくるには、それなりのスペースを借りることになる。非常に家賃がかかるし、担い手も足りていない。場所・人・金が足りていなくて、望むペースで増えていかなかった」(平岩さん、以下同)
共働きの家庭が増え、学童のニーズは高まる一方、学童施設の設営が追い付かず、学童職員の賃金の低さから人手も足りていない現状だ。
平岩さんたちは現状を打破するため、声を上げてきた。
「スピード感をもって日本全国で解決するには、学校施設を活用するのが一番。そこに地域市民に来ていただいて、子どもたちと遊びやスポーツ、物づくりをしたり、あるいは料理をすることも学校であればできる」
学校を利用した、子どもの居場所づくり。学校で放課後を過ごすことは理想的で当たり前のように思えるが、そこには高いハードルが発生する。
「学童保育は厚生労働省、学校は文部科学省。いわゆる縦割りの状態が部分的に生じてしまい、学校施設の活用が進まなかったことが場所の面ではある」
国も学校施設の活用を進めようとしているが、なかなか難しいという。
しかし、平岩さんは「活用できる学校はまだまだある」と意気込み、自治体や学校に働きかけている。そして、学童待機児童問題の解決には、場所を増やすこと以外にも大切なことがあると語った。
「小学生だと、『行きたい』という意識がしっかりしてくるので、行きたい(と思える)施設でないと機能していないことになる。“小学生の問題”は量と質を同時に追いかけていきたい」
そこで、平岩さんは地域の方と協力し、スポーツや料理などを教える「市民先生」による授業や家電・飲料メーカー企業とコラボし、子どもが興味を持つプログラムを作り全国へ展開している。
「子どもたちのために『何か貢献したい』と思う方は、地域市民も企業の方もたくさんいるので、それを届けられるつなぎ役が必要になる。よく自分たちをミツバチに例えるが、飛び回ってつなげていく役割が社会にいれば、子どもたちにいろんな社会の資源や思いが届くので、先生や親に加えて、社会・市民という資源が子どもたちに届くと、より解決に近づいていくと思う」
ノンフィクションライターの石戸諭氏は、学童保育職員の人手不足や“縦割りの弊害”などの「小1の壁」問題について、共働き世帯の増加や考えの変化が原因だと推測した。
「保育園は働きに出る親のために預かる場所だが、当初の制度設計で、ここまで共働き世帯が当たり前のものになり、共働きに対する考えが変わることまで想定はしていなかったように思う。現実に制度が追いついていない時期が続いていた」(石戸氏、以下同)
「学童のニーズも保育園問題と同じで、制度が現実に追いついていない。小学校1年生は、少し前まで年長で、『小学生になったのだから家で留守番して』なんて言えないだろう。だからと言って保護者に『もう保育園ではないから、14~15時に帰ってきてください』というのも無理がある。明らかに制度を整備していかなければならない時代になっている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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