旅行先でお手伝いをして報酬を得るというユニークなサービス「おてつたび」。関係人口の創出や 地域活性化を目指すサービスの仕掛け人に話を聞いた。
「収穫時の農家やシーズン時の宿など人手不足で困っている事業者と、地方に興味のある方々をWeb上でマッチングさせるプラットフォームを展開している」
こう話すのは、株式会社「おてつたび」の永岡里菜代表。おてつたびは、サービスに登録したユーザーと事業者をマッチングし、その地の事業を手伝い報酬を得る仕組みになっている。
いちごの収穫やワカメの刈り取りなど、お手伝いの内容も地域によって様々。報酬を得られることで旅費を削減できるだけでなく、知られざる地域の魅力に触れることができるという。
「著名な観光名所がない『どこそこ?』といった地域にも“お手伝い”という新しい目的を作る。その地域ならではの魅力を知って帰る人が増えてほしいと願っている。著名な観光名所がない、人が来てもらいにくい地域の魅力を知ってくれる人を増やすにはどうすればいいのか。それが、『おてつたび』創業の背景だ」
こうして、2019年に始まったおてつたび。現在は全国約900の事業者と提携するまでになった。
愛媛県今治市の大三島で、50年以上続く「旅館さわき」もおてつたびを利用する事業者のひとつ。はじめは、人手不足の解消が目的だったそうだが、これまでに20人を受け入れていくうちにある“相乗効果”もあったという。
「おてつたびに惹かれた理由は、単なる派遣と違って『地域に深く入り込みたい』『地域のことをもっと知りたい』という利用者が多そうだと思ったことだ。おてつたびを通じて来た人の話を聞くと、島民が気づかなかった良いところや『この場所をこんなに気に入ってもらえているんだ!』というスポットを改めて知ることができる」(旅館さわきの若旦那・菅航輝氏)
おてつたびをきっかけに地域と人の新たなつながりが生まれる。おてつたび後、その地域と関わり続ける人も多いそうだ。永岡氏は今後、提携する事業者を増やしていき、日常の選択肢のひとつとして「おてつたび」がある社会を作りたいと話した。
「移住された方や就職された方の話も伺っている。二拠点まではいかないものの、定期的にその地域に通っている方がいるのも聞いている。自分の第二の故郷のような形で地域と繋がり続けられている方は多いのではないかと思う。
時には手伝いに来てくれたり、地域のものを買って経済を回してくれるという形で一人一役ではなく、二役三役になっていきながら地域が支え合っていく。そんな未来ができてほしい。そこに向けて頑張っていきたい」
生産者にとっての人手不足について、元岩手県議で株式会社「雨風太陽」の代表取締役・高橋博之氏は次のように話す。
「人手不足は、日本中の生産現場が抱えている課題だ。農業は、1年中忙しいわけではなく、繁忙期がある。(これまでは)地域の方々に手伝ってもらっていたが、そこが高齢化している。ほんとうに人手が足りない状況だ。都市に住む若い人たちは生存生活に必要な条件が整った社会に生まれてきたことで、“生きるリアリティー”に飢えている状態なのではないか。生産現場に関わることで両方の課題解決に繋がるソリューションになっている。
いまの消費社会では、自分の命がどこに依存してるのか見えない。そこが見えるとよその地域のことでも他人事ではなくなっていく。生産現場を守っていくには、若い力をいかに引き込んでいくかがますます重要になってくるだろう」
また、高橋氏は地域活性化を進めることについて、自身が作った言葉である「関係人口」とともに考えを述べた。
「観光だと一過性にしかならず、移住はハードルが高い。この間を作りたかった。普段は東京に暮らしや仕事の拠点があっても、定期的に“推しの地域”にかかわってコミットし続ける、こういう都市と地方を往来する人たちを『関係人口』と名付け、増やしていきたいと思った。日本の総人口はこれからも定常的に減っていくだろう。結局、移住も人の奪い合いでゼロサムゲームだ。しかし、地方と都市どちらも往来する関係人口であればまだまだ増やせる」
おてつたび代表の永岡氏は地域活性化について「盛り上げてあげますというスタンスではなく、その地域のことが好きだから、一緒に何かしたい。楽しいから一緒にやりたい。そういった感情の方が、長く続けていくことにつながるのではないか」と述べている。
高橋氏は「“都市と地方をかき混ぜる”こと。どちらの問題も一緒に解決を図ることが大事だ」と訴えた。
「ヨーロッパでは、1960年代に『労働時間短縮運動』をやっていた。自由時間を経た都市住民がどこに向かったか、答えは『農村』だ。自由時間を、都市と地方の人が農村で共に暮らして新しい価値を生み出す歴史があった。日本も、地域の活性化だけを考えるのではなく、都市の課題にも同時にアプローチすることが必要だ。
これまでの『地方創生』『格差是正』といった言葉は、盛り上げてあげますといった“上から目線”にも思えてしまう。そうではなく、お互いの強みと弱みを補い合いながら新しい価値を生み出していくことが重要だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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