超早指し戦に見る棋士の“反射神経全盛期”永瀬拓矢王座「藤井竜王といえども反射神経だけで勝てなくなってきた」/将棋・ABEMAトーナメント
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 トップ棋士でもしびれる超早指し戦の先に、棋士の“反射神経全盛期”が透けてみえるようだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が4月1日に放送される。今年もリーダーとして参加する永瀬拓矢王座(30)は2度目の優勝を目指してチームを作り上げるが、大会を振り返り親交の深い藤井聡太竜王(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)であっても苦戦が見られることに「無双している感じではない。反射神経だけでは勝てなくなってきていますね」と言及した。超トップクラスだからこそ感じ取れるその差を考慮しながら、今年はどんなチームを作るか。

【映像】1巡目指名にして明言する永瀬拓矢王座

 藤井竜王が中学2年生でプロデビューした当初から研究パートナーとして長く時間を過ごしている永瀬王座だからこそ、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールにおける藤井竜王の戦いぶりに、少しずつ変化を感じ取れた。藤井竜王自身も、超早指し戦に対して「反射神経が…(衰えた)」と漏らしたことがあったが、これを聞くと「そうなんじゃないですか(笑)。全盛期がすごすぎるという言い方が正しいかわかりませんが、最盛期と比べると全体的に。藤井竜王といえども反射神経だけで勝てなくなっている気がします。前みたいに全部勝つわけにもいかないので、ギアを変える、違うギアを使ってくるんじゃないかと思いますね」と、今大会での戦いぶりについてまで予想をめぐらした。

 将棋界には、瞬時の判断と経験・知識が絶妙なバランスで噛み合う「25歳最強説」を唱える人も少なくない。令和の天才・藤井竜王も14歳でプロ入りし、公式戦はもちろんながら当時個人戦だったABEMAトーナメントも無類の強さで勝ちまくった。地力の部分は本人から「角1枚分」成長したと語ったこともあるが、人間である以上はどうしても少しずつ衰える部分もある。そこが反射の部分だと永瀬王座は見ている。

 衰えの部分をうまく戦略・戦術でカバーしているのが渡辺明名人(38)だという。「渡辺名人の健在ぶりは素晴らしいです。瞬発力で最大値が出せなくなった時に、渡辺名人はうまく経験や時間の使い方をコントロールされている印象があります。(自分も)そういう風に切り替えないといけない時期に入っているんじゃないかなという気がします」と、30代に入って考えることも増えているようだ。

 そんな永瀬王座が、今年の大会でどんなパートナーを選ぶのか。1巡目には3年連続で指名してきた相棒・増田康宏七段(25)が確実だ。「相棒は指名するんですけど、重複するのが決まっているんですよ。指名するリーダーがいると聞いたので(苦笑)。調べて見たら相棒のABEMAトーナメントでのレーティングが藤井竜王に次で2位だったんですよ。1巡目が取れなかったら一応2人ぐらい候補がいて、くじが外れたら関東で自分が研究会をやっている方、2巡目には前回指名されなかった宮田門下の方を」と、大量のヒントを出した。

 和やかなシーンも多い同大会だが、戦いの最中にストイックの勝利を目指しにいく永瀬王座の姿も毎回話題になるポイント。今年“軍曹”の顔は笑みに溢れるか。

◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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