台湾のセキュリティ企業「TeamT5」が25日、台湾社会の混乱を狙って中国が仕掛けたとみられる「認知戦」の調査結果をまとめた。共同通信によると、2022年8月、当時アメリカの下院議長だったペロシ氏が台湾に訪問した際、ネット上に流れた情報は中国によるウソだったという。
【映像】「戦争屋ペロシ台湾を出る」コンビニなどで拡散された画像(イメージ図)
TeamT5は「偽情報は国民をパニックに陥れ、政権への信頼を失墜させることが目的だ」とコメントを発表。情報によって人の認知を操作する認知戦は、陸海空・宇宙・サイバー空間に次ぐ“6番目の戦場”とも言われ、日本も他人事ではない。
韓国では先週、北朝鮮からの指示を受けた朝鮮日報が「福島沖で怪魚出現、奇形児出生」などのデマを拡散していたと報じられた。偽りの情報を使い、反日感情をあおる活動が行われていたという。
世界に広がる認知戦に、日本はどのように戦っていくべきなのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では専門家と共に議論を行った。
元陸上自衛隊・東部方面総監の渡部悦和氏は「ロシア・ウクライナ戦争でも情報戦、その中でも認知戦が大きな話題になっている」と話す。
「中国も台湾に対して侵攻を行い、台湾統一を図るかもしれない。その時に中国は認知戦をやるだろう。ペロシ議長の台湾訪問で、中国は驚いた。影響力のある政治家が行動をとった。その驚きからサイバー攻撃、あるいは認知戦を仕掛けたと見ている」
渡部氏によると、認知戦の歴史は「ものすごく古い」という。
「プーチン大統領がやっているのは脅しによる認知戦だ。これ以上ウクライナが抵抗、あるいはアメリカが高度な兵器を与えるなら『戦争はエスカレートして第3次世界大戦になる。だからやめなさい』と。脅しによる認知戦は、戦国時代から現代に至るまで、多くの人たちがやってきた」
去年12月、日本はこうした事態にも対応できるよう、陸上自衛隊に情報戦専門部隊の新設を決めた。しかし、誰もが投稿できるSNSに対し、どのように働きかけるのだろうか。
「2段階があると思う。まず個人が防衛しないといけない。個人ができないところは国家が統制して防衛する。個人が入手したニュースの場合、事実か、嘘か、自分自身で判断する必要がある。最近だとTikTokは、動画かつ音楽が絡み合って短時間で人間の脳に影響を与える。我々の脳は新しいメディアが出てくると、それに感化されやすい。偽情報はTwitterやFacebookにも流れてくる。国家はSNSの会社に対して『フェイクニュースを全部排除しなさい』と言わなくてはいけない。世界中でプラットフォーマーたちに圧力をかけることが必要だと思う」
渡部氏の説明に、コラムニストの小原ブラス氏は「いいねやリツイートの数のインパクトがすごく大きい」と話す。
「エゴサーチをしたら『小原ブラス、過去にこんなことを言っていた』と投稿している人がいた。それに“いいね”を押して、本当に信じてしまう人がたくさんいる。ニュースサイトに置き換えても、いいねやリツイート、コメントがたくさんつくと、それが本当のことのようになり、どんどん広まっていく。これの国家版になっていくんじゃないか。一個一個洗い出して全部ブロックするのは、あまりにも難しい。人は感情を揺さぶられると、確認を怠ることがある。一人ひとりが1回冷静にならないといけない」
渡部氏は「真実と嘘を見分けることが難しい時代になった」として「AIが作ったディープフェイクに対して、これからはAIで暴いていく。“カウンターAI”という発想は、これから重要になってくる。このいたちごっこは、永遠に続くだろう」と述べる。
「中国が古来から守っているのは『戦わずして勝つ』という信念だ。戦争はやらない。戦争に至る前に、例えば情報戦で台湾を統一してしまおうと。あるいは、2024年に台湾総統選挙で勝つ。これで親中国の考え方を持つ国民党の総統が誕生したら、戦わずして勝てる。この状況に我々も真剣に向き合わなければいけない」(「ABEMA Prime」より)
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