匿名インフルエンサー「DMは毎日のように来る。『PR表記はナシ』で」 10月からステマ規制も残るグレーゾーン 弁護士に聞く線引き
【映像】トップクリエイターが語る「ステマ」案件のリアル
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 消費者庁はステマ(ステルスマーケティング)を景品表示法の不当表示として、10月1日から禁止行為に追加する。取り締まりの対象は広告を出す事業者で、インフルエンサーなどPRした側は問われないとした。

【映像】トップクリエイターが語る「ステマ」案件のリアル

「商品に対して正当な広告宣伝をしなさい、間違ったことを言わないようにしなさい、というのが景品表示法。新聞やテレビ、雑誌は“ここは広告、ここは記事、ここは番組”と、意識しないでも切り分けられた。しかし、ネットやSNSでの発信はそれらが混じっていて、誇大に宣伝されていたり、とんでもないものが『良いよ』と言われていても判別がつかない」(ITジャーナリスト・三上洋氏)

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 今回の規制は消費者に広告だと明示するため、「広告」「宣伝」「PR」などの表示を必ず入れることが最重要ポイント。そのため、PR表示がないのに宣伝をしている、PR表記が周りの文字と比較して妙に小さい、何らかの対価と引き換えに高評価をつける「不正レビュー」「なりすましレビュー」などが規制の対象になる。

 一方、観光大使などPRであることが明白な場合や、商品を無償提供されたインフルエンサーが「自分の意志」で自由にレビューを投稿することなどは、規制の対象外となる。

 日本でステマが注目されたのは、2012年の「ペニーオークション騒動」。入札しても事実上落札できないサイトの運営者たちが、集客のため芸能人に金銭を払って架空のレビュー記事を依頼。このステマが明るみになり、何人かの芸能人が芸能活動の停止を余儀なくされた。

 また、同年にあった「食べログ高評価騒動」。高評価を投稿しランキングを上げる見返りに、業者が飲食店から金銭を受け取るという構図が明らかに。さらに2019年、映画の感想漫画をPR表記なしでSNSに大量投稿した「ステマ漫画疑惑騒動」。2021年、SNSで特定の美容院などを紹介する見返りとして無料サービスを受けていたことが発覚した「局アナステマ疑惑騒動」なども起こってきた。

■匿名インフルエンサー「DMは毎日のように来ている」

 『ABEMA的ニュースショー』が匿名を条件にインフルエンサーに実態を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

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「最近、大炎上しそうな案件依頼はさすがに見かけないけど、美容系やダイエット系の商品やサービスをレビューしてほしいってDMは毎日のように来ている。もちろん『PR表記はナシ』で。ギャラは商品やサービスと相殺か、高くても5万円ぐらい」(Aさん)
「フォロワー数を見て、PR会社やプロモーターが片っ端から『PRナシ宣伝』を依頼していて、1案件のギャラが10万円前後なら間違いなくステマ。以前、ある証券会社から『日経平均株価の予想キャンペーンに当選させるからSNSで当選したことを拡散してください』というオファーがあった。楽なのでつい加担してしまうインフルエンサーは多いだろう」(Bさん)

 そんな中、TikTokのフォロワー数630万人、YouTube登録者数770万人超のトップクリエイター「マツダ家の日常」の関ミナティは、「クリエイターと企業を守る素晴らしい取り組みだ」と規制を評価する。

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「ステマは一歩間違えると全ての信頼を失って、活動を断たれてしまう。シートベルトが義務化されたのと同じで、『規制が厳しい。おかしい』と文句を言っているのはお門違い。抜け道を探すよりもクリエイティブを高めるべき。#PRがついていると見てもらえない、視聴数が落ちると言われているが、僕たちが実際にナショナルクライアントと手を組んで作っているショート動画広告は、#PRを入れてもちゃんとバズるものはある。それを再生させないようにする仕組みにはなっていないので、クリエイティブができていない言い訳に使われているだけ」

■グレーゾーンは存在… 弁護士に聞く線引き

 とはいえ、ステマに関する初の法規制も不透明な部分が多いという。「グレーゾーンな事例はまだまだ存在する」と指摘する、ステマに詳しい板倉陽一郎弁護士に具体例を聞いてみた。

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Q.大量の化粧品を無償提供され、同封の手紙には「よかったらSNSで紹介してください」「『保湿力すごい』『若返る』というキーワードは必ず書いてください」と書いてあったので、そのとおりにSNSにレビューを投稿。ギャラは1円ももらっていないが、SNSで書く度に化粧品が届くようになった。

A.ステマに該当
「『保湿力すごい』『若返る』と言われて書く、内容をコントロールしているのはステマに当たる。『投稿だけお願いします』であれば引っかからず、自由に書いているかどうかが問題になる。しかし、SNSに良いことを書くと商品を送ってくる場合は、直接の指示はないものの“良いことを書け”という話ともとれ、事業者がアウトになることはある」(板倉弁護士、以下同)

Q.焼き鳥店でアルバイトをしているAさんが、店長から店の宣伝を頼まれた。客の立場として書いたほうが伝わると思い、その店の良さを客目線でSNSに投稿した。

A.ステマに該当
「従業員が店長に言われている、つまり焼き鳥店自身がやっていることを明らかにしないと今回の規制に引っかかる」

Q.投稿内容は指示されていないが、SNSに投稿したら美容院や脱毛などの無料施術を受けられるという案内があり、それを受けた。

A.ステマには該当せず
「表示内容をコントロールするかにつきるので、問題ない。投稿してキャンペーン応募は大丈夫だということは、消費者庁の運営基準にも書いてある」

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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