画像の生成や文章の作成など、AIを活用したサービスが次々と登場し、身近に感じられるようになった。AIの持つ可能性が広がるなか、次に注目されているのが「声」だ。
【映像】妻の歌声を再現したAIによる「アメイジング・グレイス」
「『歌』が(妻との)つながりだった」
亡き妻が残した歌声から新たな曲を作り出す取り組みを続けてきたと話すのは、IT系の編集記者として活躍する松尾公也氏。「大好きな音楽を、大好きな妻と楽しみたい」。そんな思いで、妻が残した3曲分の歌声をもとに合成音声を制作した。
「50歳で他界した2~3カ月後に、彼女が残した歌声の断片をつなげる形で曲を作れないかということを始めた。ただ、初期の機械音声では音の揺れやビブラートが自然にならせない。手作業による微調整にかなりの時間が必要だった」
当時の技術には限界があったと話す松尾氏。しかし、ここ数年のAI技術の進歩で、作品制作にかかる時間や完成度に劇的な変化が訪れた。それが、歌声を別人の声質に変換できるという技術。ソフトに歌詞やメロディーを入力する必要はなく、人の自然な歌声を別人の声に一瞬で変えられるようになった。これを使って松尾氏は、自分が歌った声や抑揚を妻の声でトレース。さらに、生前の妻の写真をAIに学習させ新たに生成。妻の姿と歌声を再現したそうだ。
AIの力によって、亡くなった人の声を蘇らせることができるようになった今。「声も財産と同じで残していく必要がある」と松尾氏は語る。
「妻とは18歳のころから付き合い始めた。同じバンドで付き合い始めて、2人でカラオケに行ったり、自宅で一緒に音楽を作ったりした。(再現した歌声については)『あ、いいなぁ』と思って何度も繰り返し聞いている。声がすごく好きだった。ずっと聞いていたかったが、残された3曲分のトラックを繰り返し聞くだけではもったいない。自分のできる限りで作れるならば、どんどん作って妻の歌声にしたい」
先月行われた「第一回AIアートグランプリ」で、松尾氏の作品『Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]』はグランプリを受賞。便利さだけではない、AIが持つ“可能性”を示した作品が審査員の心を打った。
「(制作の様子を奥さんが見ていたら)『またやってるね』という感じだろう。ただ、自分のいないところで制作するのを嫌う人だったので『できるだけ一緒にいたい』『同じことをやっていたい』という遺志には沿っていると思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側