諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
【映像】7年前の跳び箱動画がなぜ今注目? “頑張る”or“無理させない”を議論
この記事の写真をみる(6枚)

 今、ある動画がTwitterを通じて広がり、賛否を呼んでいる。動画は幼稚園児の男の子が、自分の背丈と同じくらいの跳び箱に挑戦する様子を捉えたものだ。

【映像】「できる!できる!」園児らが組んだ円陣の様子(イメージ図)

 友だちや保護者が見守る中、男の子は何度も挑戦するが、飛び越えられず、泣いてしまう。すると、他の園児たちが男の子を囲み一斉に「できる!できる!」と声をかける。直後の挑戦で、男の子は見事跳び箱を飛び越える。

 この動画にネットでは「頑張ることの大切さ」「諦めないことを学んだ」「感動した」と絶賛の声が寄せられた。一方で「見世物みたいでかわいそうに見える」「無理強いに見えて軍隊みたいで気持ち悪い」「感動の押し売り」などの声もあり、賛否を呼んでいる。

諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
拡大する

 動画は7年ほど前に撮影されたものだが、同幼稚園では今でも、年長の園児が年度末に10段の跳び箱に挑戦するという。無理をさせず、自主性を重んじ、諦めることも選択肢の一つという声もある中、頑張って乗り越える意味はあるのか。

 ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、体操指導者の池谷幸雄氏は、動画の園児について「絶対に跳べる子だ。見ると分かるが、跳び方がかなり上手だ」と指摘する。

「ただ、発表会に人が来ていて、緊張であがって跳べていない。円はいつもやっているんだと思う。それで平常心を取り戻して飛べた。動画は一部だけだから、いろいろな議論が巻き起こるが、僕らプロから見ると、跳べる子だと分かる。初めてできたわけではないと思う。できないことをやらせている感じではない。全く跳べない子に挑戦させているのなら、別の話だ。動画の園はおそらく体育会系だ。普通の園はやらせない。園の教育方針があって、それを分かっている親が入れているんだと思う」

諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
拡大する

 過去にバルセロナ、ソウル五輪に出場し銀1個、銅3個のメダルを獲得した池谷氏。体操の指導においても「見極めが大事だ」と話す。

「できないことを無理やりやらせたり、なんとか頑張れと言うのは、指導的に違う。その子の能力を見て、できるところの限界の部分まで押し上げてあげるのが、指導であり教育だ。本当に跳べない子に『頑張れ!できる!』と声をかけても、絶対に跳べない。見極めるのも指導者の力だ」

 インターナショナル保育園の施設長であるRyu氏はこの動画に疑問を持っているという。

「子どもの頑張りは本当にすばらしいと感じる。だが、なかなか5歳児であの高さは跳べない。せめて5段や6段が平均だ。やり方や見せ方にも違和感を持った。本当に子どもがあの場で『跳び箱をやりたい』と言ったのか。5歳児でなかなか言えるものではないとは思う。周りの大人がセッティングした状況だから、普段の力が発揮できなかったのではないか。相当なプレッシャーがかかっていたと思うし、邪推にはなるが、大人たちの見世物に私は見えてしまった。普段、保育に携わっている身としては、やっぱり子どもがあそこまで泣いているのに、強要するようなことはやりたくない」

 保育士歴11年のキャリアを持つRyu氏。7年前と今を比べて、何か保育業界で変わったことはあるのか。

「この数年間、国が子育てや教育に力を入れ始めた。今ちょうど過渡期にあると思う。幼児期は可能性を広げる時期だ。スポーツ界が衰えてきているわけでもないし、跳び箱10段をやらせるのは別に幼児期じゃなくていい。子どもの主体性や気持ちを大事にしようという流れがある中、保育業界と保護者のギャップをすごく感じた」

諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
拡大する

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「運動ができなかったから、縄跳びやマラソンでクスクス笑われて、体育が嫌いになった」と打ち明ける。

「動画の園児はできる子かもしれないが、運動ができる人とできない人で価値観は全く違う。『いい話だ』と思うかどうかは分かれる。できないことを頑張らせたいとき、なぜいつも体育なのか疑問だ。保護者も見ているし、諦めずにやるのも大事だと思うが、体育だけに絞って諦めずにやらせるのはちょっとどうかと思う。動画の園児はうまくいったが、いかなかったらどうするのか」

諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
拡大する
諦めることも大事? 幼稚園「跳び箱10段」行事に賛否…体操指導者&保育士の見解は
拡大する

 元テレ東社員で経済メディア「ReHacQ」プロデューサーの高橋弘樹氏は「足りない情報が多すぎる」と指摘する。

「是か非かを論じる上で、全く情報が足りていない。この状況で議論するのは、社会が危険になると思う。撮った人は何の悪気もなく、撮影していただろう。保護者が思いもよらぬ形で傷ついている可能性もある。否定された人は恐怖を感じるし、『あんな幼稚園に入れて』と反対派から詰められるかもしれない。推測する上で、体操指導者や保育士の視点は勉強になったが、リテラシーの観点からいうと、動画を是か非か決める議論になることをいさめるのがメディアの役割じゃないか」

 高橋氏の意見に番組司会のテレビ朝日平石直之アナウンサーは「答えを出そうとして話しているわけではない」とコメント。「当事者たちをどうこう言いたいわけではなく、切り取られた動画が7年経って、なぜ今バズっているのか。7年前だったらよしとされていたものが、今になって『あり得ない』とバズっている部分もあると思う。私は炎上という言葉は使わないようにしている。炎上と言った時点で、メディアが決めつけている。私はそういうふうにはしたくない」と述べた。(「ABEMA Prime」より)

【映像】7年前の跳び箱動画がなぜ今注目? “頑張る”or“無理させない”を議論
【映像】7年前の跳び箱動画がなぜ今注目? “頑張る”or“無理させない”を議論
【映像】「東京と名古屋は最悪の地形」“花粉症ゼロ”公約はどこへ? 政策の現在地は
【映像】「東京と名古屋は最悪の地形」“花粉症ゼロ”公約はどこへ? 政策の現在地は
【映像】すごーい! 徳川家の家系図(画像あり)
【映像】すごーい! 徳川家の家系図(画像あり)
【映像】ひろゆき氏 “車いすギャル”に「どんどん晒せ」
【映像】ひろゆき氏 “車いすギャル”に「どんどん晒せ」
【映像】ひろゆき氏「僕には正義か分からない」未成年の“炎上動画”拡散の是非
【映像】ひろゆき氏「僕には正義か分からない」未成年の“炎上動画”拡散の是非
意識がない娘を24時間在宅でケア「息抜きは休日に1、2時間ほど」重症心身障害児を授かった夫婦の日常

■Pick Up

【Z世代に聞いた】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 

この記事の写真をみる(6枚)