霞が関 AIによる「答弁作成」で“脱ブラック”できる? ChatGPT本人が課題を指摘「政治的リスクや法的責任を考慮すべき」
【映像】霞が関は“脱ブラック”できる? ChatGPTに聞いてみた
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 超ハードワークで知られる霞が関。中でも大変と言われるのが国会での「答弁作成」だ。こうした業務の負担軽減や働き方改革を視野にChatGPTを活用する案が出ている。そのメリットと課題に迫った。

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 ChatGPTについて、国会答弁などへの活用を検討する考えを示した西村経済産業大臣。「高精度なAIツールは、さらなる性能向上によって言葉を使う仕事などを抜本的に変える可能性がある」と述べた。さらに、河野太郎デジタル大臣も「霞が関でChatGPTを含めたAIツールを活用してどのように働き方改革につなげていくか、これは非常に大きなテーマだ」と話している。

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 一方、懸念されているのが著作権侵害や情報漏洩といった問題だ。AIの学習データに著作権のある文章が含まれていると、生成した文章が著作権を侵害する可能性がある。また、非公表の情報を入力してしまった場合は機密情報の漏洩につながるリスクが指摘されている。

 松野官房長官は、ChatGPTなどのAIツールを政府が使用する場合について「従来の検索サービスとは異なる情報漏洩のリスクが想定される」と指摘。高市経済安保担当大臣も「リスクを減らす対策も検討が必要」との考えを示している。

 霞が関の長時間労働の理由の一つには、国会での答弁作成がある。「法律の解釈」「過去の答弁との整合性」の確認などに膨大な時間を要するのだ。農水省の官僚や環境省の官僚らも「過去の答弁を探したりしなくてすむようになれば楽になる」「もっと生産的なことに時間を使いたい」という声が上がっている。

 こうしたChatGPTを霞が関で活用する案について、『ABEMAヒルズ』に出演した東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介氏は「今のところ難しいと言わざるを得ない」と考えを明かす。

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「ChatGPTは、どのようなプロセスで回答を出しているかが“ブラックボックス”になりがちだ。国会答弁における政府側の回答を作るときに使うことを想定しているのだろうが、その際に求められる“回答の根拠”がわからない状態では、将来の答弁が現時点の答弁を前例とするが、ChatGPTの答弁では責任を取ることができない。

 ただし、例えば政府がこうした生成系AIを提供する会社と秘密保持を含む契約をして、政府の過去の答弁を学習する“クローズドなAIシステム”が作れれば、活用できる可能性はあるのではないか。Microsoftの検索エンジン「Bing」はどの根拠から答えを導き出してたかURLの“脚注”がつく。こうしたサービスは活用可能性があるのではないか」

 また、『ABEMAヒルズ』はこの件についてChatGPTに「国の見解を理解し国会答弁を作成することは可能か」と聞いてみたところ、次のような回答が得られた。

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「国会答弁は、政府の公式の見解や政治的な立場を正確に反映し、政治的なリスクや法的な責任を考慮して作成されるべきです。したがって、正確な国会答弁を作成する場合には公式の情報源や政府関係者の指示に従うべきです」

 さらに、「国家公務員の業務負担を軽減することは可能か」と質問した。

「問い合わせ対応の自動化、文書作成、情報収集と整理の支援などで一定程度軽減することが可能です。ただし、専門的な知識や判断が必要な場合もあり、ChatGPTが完全に業務を代替するわけではありません。適切な運用と配慮、セキュリティやプライバシーにも注意が必要です」

 ChatGPTの回答について、西田氏は「これ以上付け加えることはほとんどない。85点以上の回答だ」と評価。次のように解説した。

「国会答弁は政治的責任を負うことになるが、最後は人間しかその責任を負うことができない。“仕上げは人間”ということだ。むしろ霞が関にも政治の側にもリサーチ・調査の業務は多々ある。そういった調査にかかるコストは、生成系AIなどのツールで下げることができるはずだ。ポジティブな使い方を模索することで質の高い政策立案に結びつけることが期待される」

(『ABEMAヒルズ』より)

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