タクシーでお馴染みの運転手の表示が消える? 国交省では今年の夏をめどに、タクシー運転手の名前の表示をやめ、さらには顔写真も見直す方向だ。
そもそも運転手の名前や顔写真は道路運送法に基づく省令で表示が義務付けられているが、プライバシー保護とカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の観点から必要性が疑問視されたという。
交運労協のアンケートによると、58%のタクシー運転手が「カスハラ被害にあった」と回答。求人サイト「タクシー屋さん」の野口達規氏は近年の傾向について次のように話す。
「お酒に酔っている方が団体で乗ってくると、悪ふざけする方も中にはいる。また、運転系の動画はSNSでバズリやすくて、『みんなに注目してもらえるんじゃないか』と。この5年ぐらいで増えたように思う。コロナショックで運転手が一定数辞めて、人手不足でなかなか人を獲得できないタクシー会社は、ハードルを少し下げて人を採用したい時期。提供できるサービスにばらつきが出てきてしまうと、普段良いお客さまだったのが、突然カスハラをするお客さまに変わってしまうというのが傾向」
そもそも名前や顔写真の提示は、トラブル時に運転手を特定したり、運転手に責任感を持たせたりする狙いがあったとされるが、廃止されるとどうなるのか。
「カスハラを問題として捉えているのであれば、行政側も対処方法を研修でやる。接客・接遇に対しての研修は1週間~10日しか受けない。時代とともにトラブルも多様化しているので、ケースによって対処法をもっと研修で落とし込むとかしないと、カスタマーハラスメントはなくならないと思う」(野口氏)
従業員のプライバシー保護といえば、タリーズコーヒージャパンでは2022年5月から名札を実名からイニシャル表記に変更。また、同年6月末から、厚労省は薬剤師に対して名札に本名以外の記載を認めた。これもストーカーやカスハラの被害件数が増えている状況を踏まえての措置だという。
一方で、未だにパイロットが名乗り出ているのが航空業界。42年間乗務してきた元日本航空パイロットの小林宏之さんは、名前をアナウンスするのは「乗客の安全確保、機内の治安維持のため」とした上で、次のように語った。
「機長のアナウンスは顔が見えない、ラジオのアナウンス。早口で話すとお客さんも不安を感じるので、間の取り方は相当工夫がいる。夜のアナウンスはできるだけ短く、ゆっくりと静かに。タクシーと飛行機では責任の重さが違うので、(名乗ることが)なくなるとは考えられない」
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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