元日本代表キャプテン・長谷部誠は39歳となった今でも衰え知らずだ。
2014年からフランクフルトに所属する長谷部は、今季も3バックの中央に陣取り、安定感を見せている。16日のリーグ戦、メンヘングラードバッハ戦では、両チーム最多となるパス73本、さらには103回のボールアクションを記録し、攻守に抜群のプレーで高い評価を得た。長谷部はなぜ、40歳を目前に控える今も、“デュエル”が重視されるブンデスリーガで活躍を続けられるのか。なぜ、抜群の判断に基づく的確なプレーができるのか。
【映像】皇帝・長谷部誠の超ディフェンス!圧倒的な危機管理能力
長谷部が今も安定感をもたらせている理由の一つに、的確な状況判断力が挙げられる。メンヘングラードバッハ戦のワンシーンに、そのクオリティの高さがよく表れている。
0-1で迎えた52分、ビハインドを追うフランクフルトがカウンターを受けた場面で、長谷部はフランス代表FWテュラムへのダイレクトの縦パスに対して素早く対応し、前を向かせなかった。その後、再びボールを受けたテュラムがDFを突破して3対3の状況となるが、自陣へと戻りながら首を振って状況を把握。中央へと走り込んだ相手選手がフリーであることを確認すると、長谷部は急速にスピードを上げてニアサイドのコースを消しに戻った。そして相手のグラウンダーのクロスを冷静に対処し、味方へとパスをつなげたのだ。
これ以上失点が許されない場面における重要なプレーだった。ABEMAで実況を務めた倉敷保雄氏も「自分のマックスのスピードを、正しい角度で、一目散に走っていくこのセンスですよね」と長谷部のプレーを高く評価している。
長谷部の活躍ぶりは現地ドイツメディアでも高評価を受けている。
地元紙『Frankfurter Allgemeine Zeitung(略称:F.A.Z.)』では、「3人のディフェンスラインの参謀として、冷静さ、概観、ボールタッチ、デュエルにおける対人の強さが、試合に特別な風格を与えている」とその影響力を称え、さらに「日本のプレーヤーは、どのような状況で何をすべきかをほとんど知っている」とその経験値を高く評価している。
またフランクフルトのスポーツ・ディレクターであるマルクス・クレシェ氏は、長谷部がチームに対する存在価値をプレー以外にも示していると話す。
「その姿勢、規律、そしてサッカー能力で、彼は我々のチームにおける完全な手本であるだけでなく、我々の試合における資産であり続けている」
こうした大ベテランへの評価は自身も意識するところであり、フランクフルトとの契約を更新した長谷部は、「自分が若手のロールモデルとなりたい」とも語っている。
ピッチ内では状況判断の的確さを活かしたプレーで、ピッチ外ではサッカーに取り組む姿勢で、他の選手の見本となっている。そうした価値をもたらしてきたからこそ、長谷部誠とクラブは、2022年2月に「2027年まで」の契約を締結したのだろう。これは、彼自身の判断で“引退時期”を決められるものであり、その後のコーチングスタッフ入りも決まっているものだ。さらに今年3月には、来日して会見を開き、2024年夏まで現役を続けることを発表し、クラブとの契約も2028年までさらに1年間延長した。
こうした契約は、生え抜きではない選手に対する待遇としては異例のものだ。それはすなわち、クラブから長谷部への信頼の高さを示すものに他ならない。これからも長谷部は、ピッチの中でも外でも、フランクフルトに貢献し続けるだろう。
(ABEMA/ブンデスリーガ)