開発途上国は働きながら技能を得られ、日本は外国人の若い働き手を確保しながら、企業の効率化・活性化・グローバル化を図ることを目指した「外国人技能実習制度」。しかし、2021年にアメリカ国務省が発表した「人身売買報告書」では「日本が制度を外国人労働者搾取するために悪用し続けている」と厳しく批判された。
世界的にも人権侵害と非難されている日本は“選ばれない国”となりつつある。こうした状況を受け、政府は“技能実習制度”の本格的な見直しを議論。10日の有識者会議で、30年続いた現行制度を廃止し、新制度の創設を検討すべきとする中間報告書のたたき台が示された。
そもそも、どんな問題が指摘されているのか。技能実習制度は、30年前に導入され、人材育成を通じた開発途上国の“国際貢献”が目的とされていた。ベトナム、インドネシア、タイなどの若い人材が最長5年間、日本企業と雇用関係を結ぶことで働きながら技術や知識を学ぶことができた。
しかし、労働環境が厳しい一部の業種において、技能実習制度は“低賃金の人材”を確保する方法として利用されていることが問題となっており、技能実習生の失踪、技能実習生への暴行、妊娠による不当解雇など、トラブルは後を絶たない。
こうした問題を解消すべく、新制度では人材育成だけでなく“人材確保”をより重視。国内での就労を後押しするため、特定分野の知識を持つ外国人の在留資格である「特定技能制度」への移行も見据え、対象とする業種をあわせる方針だ。
そのほかにも、これまで認められていなかった別の企業への「転籍」についても「人権侵害を発生させる原因だ」と指摘され、従来より緩和することを盛り込んでいる。政府は、さらに議論を重ね、4月末に中間報告、秋ごろに最終報告を取りまとめたい考えだ。
こうした政府の発表について、『ABEMAヒルズ』に出演した、元岩手県議で株式会社「雨風太陽」の代表取締役・高橋博之氏は「遅すぎる!日本が置かれている立場をちゃんと理解しているのか疑問に思う」と指摘。次のように述べた。
「日本の一次産業は、外国人の方々に支えられている。1998年に日本は世界一の農産物・海産物輸入大国で、そのころは『食べ物は外から買えばいい』状態だった。それから4半世紀経って中国に大きく買い負け、外から輸入できなくなった。自国の生産力を高めなければいけない今、ほとんどの生産現場を支えているのが65歳以上の高齢者で、それをサポートしているのが外国の若い方々だ。
ところが、この外国人についても言葉を選ばずに言うと“買い負け”し始めている。成長著しいアジアの国のほうが条件がどんどん良くなっているからだ。『人件費が安い』などと裏口からコソコソ入れるようなまねをして、自国に帰った際に日本についてどう話されるか考えているのか。“選ばれない国”になっていることを深刻に受け止める必要がある」
一方で、高橋氏はこうした外国人との共生が上手くいっている自治体を明かす。
「宮城県石巻市の牡鹿半島に人口660人の鮎川浜という農村がある。そこでは、20代のインドネシア人40人が漁業を担い、祭りで御輿を担いだりと、村の中心になっている。地域の住民らも『彼らがいないと祭りを継続できない』と話していて、“家庭訪問”のように毎年彼らの親元であるインドネシアまで行き、その家族とも交流している。来てくれる若い人たちへの理解を高めていくためにも、こうした丁寧な向き合い方が大事だと思う」
最後に高橋氏は、社会生活を支える人に対して向けられる日本人の“眼差しの冷たさ”についても考えを述べた。
「日本人は、介護・飲食店・コンビニエンスストアなど、豊かな社会を“支えている人”に対しての眼差しがあまりにも冷たい。もし仮に、外国人と共生するのが難しいのであれば、日本の若い人たちが生産現場で働かなければいけなくなるが、良い待遇を提示しなければ彼らは来ないだろう。すると、国産野菜の値段も高騰してくがそれも『嫌だ』となるはずだ。外国人も嫌、高い野菜も嫌では話にならないではないか。
こうした外国人に対する“残酷さ”の根には『外集団同質化バイアス』があると言われる。自分の内側はわかっているものの、“外側の世界”はよくわからないので、例えば外国人がみんな同じ顔に見えてしまうというものだ。当たり前のことだが、外国人という名前の人はいないし、文化が違っても一人の人間だ。尊重して支え合ってほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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