将棋の藤井聡太棋聖(竜王、王位、叡王、棋王、王将、20)への挑戦者を決めるヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦が4月24日に行われ、佐々木大地七段(27)が前期挑戦者の永瀬拓矢王座(30)に勝利し、自身初のタイトル挑戦を決めた。五番勝負は、将棋界にとって約4年ぶりとなる海外対局として、6月5日にベトナム・ダナン市の「ダナン三日月」で開幕。藤井棋聖が、自身初の海外対局に臨むこととなった。
この日に行われた棋聖戦挑戦者決定戦では、前期挑戦者で3度目の棋聖挑戦を狙う永瀬王座と、自身初のタイトル挑戦を目指す佐々木七段が激突。佐々木七段の先手で「相掛かり」の出だしとなった。後手の飛車先交換に対して先手は金を上がって対応。佐々木七段の用意の作戦で、序盤早々に前例を離れた。永瀬王座は持ち時間を使って慎重に指し進めてたが、先にペースを握ったのは佐々木七段。じわじわとポイントを積み重ねて優位を築いた。後手も流れを引き戻すべく勝負手を重ねたが、ABEMAでテキスト解説を務めた星野良生五段(34)は「駒の損得、駒の働き、玉の硬さ、すべて先手が上回っている」と佐々木七段の優勢を強調。最終盤での永瀬王座の根性の粘りを振り切り、佐々木七段が大きな白星をつかみ取った。
この結果、4連覇がかかる藤井棋聖への挑戦者は、佐々木七段に決定。自身初のタイトル挑戦が海外対局という大きすぎる“おまけ”も転がり込んできた。終局後、佐々木七段は「初めての挑戦で嬉しいですし、藤井棋聖と指せる機会なので思いっきりぶつかっていきたいと思います」とコメント。「課題が多いですが、それをクリアしながら熱戦を繰り広げられるように頑張りたい」と五番勝負への抱負を語った。
将棋の公式戦海外対局は、1976年に米国ハワイ島で行われた第1期棋王戦決勝リーグ戦、内藤國雄九段 対 大内延介八段戦が初。以来、女流棋戦を含めて23回の海外対局が行われてきた。直近は2019年4月に台湾・台北市で行われた第4期叡王戦七番勝負第1局 高見泰地叡王 対 永瀬拓矢七段戦で、約4年ぶりの海外対局開催となる。開幕局が行われる「ダナン三日月」は、ホテル三日月グループが2022年6月にベトナム中部ダナン市に開業したスパリゾートで、294の客室からなるホテル棟、ビラ、全天候型プール、温泉、レストランなどの多種多様な施設を有する大型施設となっている。
藤井棋聖は、2021年10月に行われた国際将棋フェスティバルで第8回国際将棋トーナメント優勝者の台湾代表・高校生アマと東京都内からオンライン記念対局に臨んだ経験を持つが、国外で公式戦を指すのは初めて。しかし、同年の棋聖就位式でのスピーチでは「海外の方も含めて、少しでも多くの方に将棋を知って関心を持っていただきたいというのがあります。プレーヤーとして良い将棋を指すことが最優先ですが、長期的にはそういった視点を持って活動していければ」と海外普及への意欲も示していた。
藤井棋聖、佐々木七段はもちろん、ファンにとっても心躍る見どころの多いシリーズとなることが予見される第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は、下記日程で開催される。
第1局 6月5日(月)ベトナム「ダナン三日月」
第2局 6月23日(金)兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」
第3局 7月3日(月)静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」
第4局 7月18日(火)新潟県新潟市「髙志の宿 髙島屋」
第5局 8月1日(火)愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
(写真提供・日本将棋連盟)
(ABEMA/将棋チャンネルより)