「小さいハエが50~60匹飛んでいる」「飲みかけのビールに寄ってくる」
食べ物の残り物や容器、空き缶までもが散乱し、足の踏み場もないほど汚れた部屋。そんな部屋の清掃動画が、SNSで大きな反響を呼んだ。
この部屋の住人は2人の子どもを持つシングルマザーで、性格は明るく気のいい人だとか。仕事もできる人がなぜ“ゴミ屋敷”になるまで放置してしまったのか、そしてなぜ共感の声が集まったのか、専門家に聞いた。
「動画を見て『私、一人じゃなかったんだ』『勇気を振り絞って電話することができた』と言われる方がすごく増えた」
こう話すのは、大阪府を中心にゴミ屋敷の清掃や不用品回収を手がける、「イーブイ」の二見文直社長だ。
2021年にYouTubeで2本公開された片付けの様子は、合計500万回近く再生され、大きな反響を呼んだ。しかし、イーブイでは普段、子どもが住んでいた部屋の動画は公開していないという。
「先方から『動画に残してほしい』と言われた。片付けに悩まれている方には『こういう風に悩んでいるのは私一人じゃないんだ』という共感が大事だと思う」(二見社長、以下同)
清掃動画を投稿してから、「勇気をもらった」とシングルマザーなど同じ境遇の人たちからの依頼が多くなったそうだ。そして、彼女たちには共通して見られる“ある特徴”があるという。
「“相談相手がいない”ため、精神面で孤独な方が多い」
心理学が専門で臨床心理士・公認心理師でもある明星大学教授の藤井靖氏は、ゴミを溜めてしまうのは精神面で問題を抱えている人だけでないと話した。
「ゴミを溜めてしまう人の心理は2極化している印象がある。“溜め込み症”といって精神的な問題を抱えていたり、明確な社会的孤立状態、あるいは過度の完璧主義や強迫的な行動傾向がある人が報道等でも注目されてきた。一方で近年顕在化して相談も増えている人たちでは、精神的に問題があるとは必ずしも言い切れないことも多い」(藤井氏、以下同)
さらに、優秀な人ほど“ゴミ屋敷”になりやすいという。
「最近のカウンセリングの中での一つの傾向として、ある程度仕事ができて優秀な人ほど、部屋がゴミで埋まりやすいという印象がある。典型的な要因はキャパオーバーで、仕事だったり子育てがあったりして、部屋を片付けるところまで行き届かない。あるいは、元々ある“片付けの苦手さ”が忙しさでより強めに出ている場合もある」
夜勤をしていてゴミ出しのタイミングや曜日がどうしても合わなくて、そこからスタートしてしまうなど、ちょっとしたきっかけから溜めこんでしまうという。
続けて、家事の「強化価」を高めることが大事だと語っている。強化価とは「行動の結果として生じる価値や反応、感情などの強さ」のことであり、家事はどの作業でも「やってスッキリした」「やるべき当たり前のことができた」とある程度一定なことが多いとされるが、対して仕事は「お金が入る」「充実感がある」「人から感謝されたり褒められる」と強化価が大きい。
「例えば、育休期間中、ワンオペで子どもを世話しながら部屋も綺麗に片付けられていた人が、仕事に復帰するために子どもを預けて世話をする時間が減ったのに部屋が散らかってしまったというケースがある。これは相対的に家事の強化価が低くなってしまったためだ」
「なので仕事に打ち込んでいたり優秀な人ほど、『片付けしたって現状維持だし』『特にプラスはないし』と片付けの価値に意義を見出せなくなることがある」
家事に対する強化価を高めるにはどうしたらいいのか。
「ホームセンターに行って、とにかく大きいサイズの袋を買ってきて、散らかっている物を5分ぐらいで全部入れちゃう。そうすると、『こんな短い時間で部屋が一気に片付いた』という満足感につながり、片づけに対する強化価が高まる。それをきっかけに、ちょっとしたタイミングやスキマ時間の片付け習慣につながることもある。また、片付けワンオペになっている場合も多いので、例えば子どもと一緒にやることも大事。意外と子供は親との片付けに前向きなもの。人の中にある本能的な体験共有欲求をも活用していく」
(『ABEMAヒルズ』より)
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