休日の昼下がり、都内に住む岩田さん(51歳)の家には、今年23歳になる三つ子たちがいた。大学生の長男、社会人1年目で休日には寮から帰ってくる次男、そして同じく社会人1年目の三男だ。
長男の耳かき、次男の爪切りなど、頼まれるまま、岩田さんはすべてやってあげる。なぜ、自分でやらないのかという疑問に長男は「自分でやってもいいが、楽なのでやってもらっている」、次男は「小さい頃からの習慣が抜けない」と答える。
夜は、長男と三男と一緒にお風呂に入る岩田さん。趣味から仕事の話まで、裸になって語り合っていた。
一般的には異性の親との入浴は小学生ぐらいで卒業するケースが多いが、岩田さんは「子どもの頃からの習慣がそのまま続いている」と話す。
「今でも子どもたちとよく話をする。その流れで『続きはお風呂に入りながら話を聞こう』と流れで入っている。『何歳になったらお風呂は卒業』は特になかった。子どもたちも『何がダメなのか?』みたいな感じ。耳かきや足の爪も、頼まれたからやるだけで、そこに私のストレスはない」
岩田さんは忙しい医療関係者の夫の分まで、ほぼワンオペで育児をしてきた。息子たちにの食事には人一倍過保護になったという。
「三つ子たちは超未熟児で産まれてきた。いつまでたっても食が細くて『人並みに大きくしなくては』という気持ちが強かった」
家には息子たちの好物を常にストック。冷凍庫を見ると、彼らが好きなアイスクリームがびっしり詰まっていた。買い物も息子が好きな牛乳のブランドを求めて、はしごするほどだという。
「ある日、私が『あなたたちも23歳だし、そろそろママもご飯を作るのをやめようかな』と言ったことがあった。でも、息子たちから『別に何もしてくれなくていいけど、ご飯だけは作ってほしい』と言われた」
夫は、親離れ・子離れについて、どう思っているのか。岩田さんは「夫は私と子どもたちの仲がいいことに、すごく好意的だ。『ありがとう』と言っている」と答える。
三男とは、添い寝まではいかないが、同じ部屋で寝ている。三男は「確かにいろいろやってもらっているほうだ」とした上で「だからといって、僕らが親にレールを敷かれて『この道に進め』と言われてきたわけではない。広く見たら、そこまで親に依存していないと思う。自立して自分で自分の人生を決めている」と話す。
息子たちは、彼女やパートナーを家に連れてきたことはあるのだろうか。岩田さんは「この状況をほぼ知っていて、彼女を連れてくることもある」と答える。
「家庭によって幸せの形は違う。実家や寮にいれば、お金を貯められる。実家にいても自分のやりたいことは叶う時代だ。子どもの自立を親が楽しみに待っているのだから、全く問題ないと思っている」
専門家は岩田さん親子の関係をどう見るのか。心理カウンセラーの江崎英子氏は「仲の良い幸せそうな親子で微笑ましい」とした上で「息子さんたちが結婚した時、パートナーに『うちのママはしてくれたのに、この人はしてくれない。優しくない』と思わないか、少し心配だ」とコメント。
「思春期の頃には『恥ずかしい』と思って、家族以外の他人には『こういうふうにしたい』と学ぶが、それがない。だから社会に出て人間関係に悩むケースが多い。岩田さんの息子さんたちに限った話ではなく、そういうケースが多いことを私は目の当たりにしている。『心地良くて楽』と『温かい家庭』は少し違う」
テレビ朝日の田中萌アナウンサーは「実家を離れて10年以上経つ」という。「実家はすごく楽で心地よい空間だ。離れて気付いたことはすごくたくさんある。洗濯物は自動ではできないし、スーパーに行くとフルーツはすごく高い。些細なことだが、親のありがたみに気付いた。実家暮らしは悪ではないが、将来結婚するしない関係なく、一人で生きていってみることはお勧めしたい」と語った。(「ABEMA Prime」より)
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