今月15日、アディダスが発表した水着モデルの写真に波紋が広がっている。あらゆる分野で「偏見のない表現の自由を促進する」ことを目指し、女性用として販売する水着を、肉体的には男性とみられるモデルが着用しているのだ。モデルの性自認などは明かされていない。
多様性が謳われる現代。ただ、Twitterでは「女性がターゲットなのになんで男性に着せるの?」「やりすぎ、これは女性排除だ」「誰が何を着てもいいけど、これも多様性?」などの戸惑いの声が噴出。さらにアメリカは「#BoycottAdidas」がトレンド入りし、不買運動が勃発する事態となった。
これまでも、アカデミー賞が女性やLGBTQに関する新たな審査基準を設けたことで賛否の声があがった。また、日本でもジェンダーレストイレが波紋を広げるなど、何かと物議をかもしている。
そこで『ABEMA Prime』では、“セーラー服おじさん”こと小林秀章氏を招き、多様性の進む先について、議論した。
セーラー服おじさん「政治的メッセージを込めるとややこしくなる」
「可愛いのが大好き。女性になりたいわけではなく、可愛いものを着ているのが嬉しい」という気持ちでセーラー服を着ている小林氏は、10年ほど今のスタイルを続けている。
当時について「Twitterで評判になり、“一緒に写真を撮らせてくれ”などと騒がれ、原宿の竹下通りを歩くのに2時間もかかった」というが、「この間は10分で歩けてしまった。誰も声をかけてこない。やっぱりジェンダーを巡る空気が変わったとすごく思う」と語る。
そんな小林氏は今回の件について「発表する側も反発する側も、どういう論理かよくわからない。おそらくアディダスは差別を受けているアスリートに心を痛めて“僕たちはオープンマインドだ”、“みなさんが見慣れれば差別がなくなっていくだろう”という意図で広告を出したのだと思う。実際、映像を見たらすごくアリだと思った。映像的にもモデルの着こなしも綺麗」と発言。
一方で、「そういうメッセージは伝わりにくい。女性用だと謳っている商品を、男性に見えるモデルに着せてしまったら、今度は女性たちが着づらくなってしまうと思う。だから“女性に対する差別だ”と反発が出たのだろう。
商品の宣伝だから“これはいいでしょ”と出せばいいのに、政治的なメッセージを込めてしまうとややこしくなる。良い意図でも、“反発する人は偏見の持ち主だ”と、説教をされたような気分になって逆に伝わりづらい。やはり、良い結果は招かないだろう」との見方を示した。
広告の取り下げは必要? 「何に対して謝るのか」との指摘も
フリーアナウンサーの柴田阿弥は「マイノリティのデザイナーとコラボしたのであれば、多様性を広告に打ち出すのは自然で、企業の自由だと思う。法的に問題や差別的な点がなければ、“なんとなく不快だ”という理由だけで取り下げるのは良くない。消費者は別のブランドを選ぶこともできるわけで、おそらくアディダスには理念があるはずだ」との考えを示した。
一方、お笑い芸人のパックンは「着ているモデルが女性ではないと誰が言い切れるのか。僕は断言できない。プラスサイズのモデルも起用しているが、それは我々が考える従来の女性っぽい見た目だ。こうした体型の方にも似合うという広告でいいのではないか」と指摘した。
このモデルが男性なのか、女性なのか――。アディダスは、それを意識したり、詮索することもない”表現の自由”を目指しているのかもしれない。
(『ABEMA Prime』より)
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