東京オリンピックの選手村跡地にできる分譲マンション「晴海フラッグ」。約2万人の居住が見込まれているビッグプロジェクトだが、現在この計画に転売ヤーの影が見え隠れしているという。
周辺の湾岸エリアの物件と比べて3~4割ほど安いとされる「晴海フラッグ」。いざ販売が開始されると転売目的の投資家や不動産会社が多く参入。倍率は最高で266倍に。実際に販売されたケースでは、本来の販売価格より3000万円以上も高い値段が付けられたものもあったという。
なぜ、価格を上げて転売されないようにしないのか。湾岸エリアのマンションの潜伏取材を行っているのらえもん氏によると、次のような理由が考えられるという。
「1つ目は晴海フラッグが不動産大手10社の大規模プロジェクトであることだ。利益も事業のシェア分しか受け取れないので“売り切りたい”と考えているのではないか。2つ目が、用地の取得の経緯だ。価格を高めにつり上げて売ると『後々に批判を食らわないか』とデベロッパー側が思うのでは。3つ目は『資料請求』にも狙いがあるのではないかということ。住宅に興味のある人が個人情報を入力して資料を請求するので、個人情報を収集する機会になる。価格の安さを『広告宣伝費』と考えているのではないか」
こうした「転売」について『ABEMAヒルズ』は、イェール大学准教授で経済学者の成田悠輔氏に話を聞いた。経済学的に転売は“あり”なのだろうか。成田氏は「効率性と公平性の問題がある」として、次のように考えを述べる。
「経済学的には転売の良し悪しに答えはない。何を目的にするかによるだろう。大事なのは転売にも『いい側面がある』ということだ。そもそも、なぜ転売が起きるのか。それは、マンションやチケットを『より高い値段で買ってもいい人』がいるということだ。モノをより高く評価している人のところに移るので、経済的な効率性でいうと転売はむしろ歓迎すべきことになる。
ただ、世の中は『経済的な効率性』だけで動いているわけではない。『公平性』の観点で転売をみたとき、規制する動きがでるのは理解できる。いま現在、多くの人は“転売=ダサい”という観念があるのも確かだ。値段がつり上ってお金持ちしか買えなくなると、モノを愛している人の手に届かないという状況が生まれる。これは道徳・倫理的には良くない可能性があるだろう」
続けて、成田氏は「経済的な効率性と公平性のバランスを上手に取ろうとする研究もある」と明かす。
「1つの例としては、先着順や抽選といった形で誰でも手に入れられる可能性がある状況を作る。その上で『公式の転売市場』を作り、そこでみんながやり取りできるようにする方法だ。実際、音楽チケットなどでそうした動きがある。経済学的な解釈をすると『公平性を保つ』『効率的に評価が高い人に配分できる』という両方の動きをやろうとしていて評価できる。
もし、転売を許すとしたら、誰でも参加できる“透明な転売”という形がいいだろう。マンションを扱う場合と音楽チケットを扱う場合とでは性質が違うが、市場ならではの慣習や文脈を理解してコミュニケーションが取れる人や両方の意見をわかっている人を中心に、対立が起こらないようバランスを取っていくのがベストだと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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