「現代にはない“不完全さ”が魅力」 昭和に夢中になるZ世代 “むしろ新しい”の原理とは?
【映像】超ミニスカ&ダブルジャケットで昭和歌謡を熱唱する“Z世代アイドル”
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 昭和歌謡にレコード、クリームソーダ、使い捨てカメラなど。いま、若い世代の間で「昭和カルチャー」がブームとなっている。Z世代の若者が夢中になるその“原理”を取材した。

【映像】超ミニスカ&ダブルジャケットで昭和歌謡を熱唱する“Z世代アイドル”

 中古のレコードなどを数多く取り揃えるレコードショップ「ユニオンレコード新宿」には多くの客が訪れていた。日本レコード協会が発表しているレコードの生産額は43億円と、10年前と比べ右肩上がりに上昇。世界的なシティ・ポップ人気も後押しし、大きなレコードブームが押し寄せている。

 ユニオンレコード新宿の黒岩卓也チーフは「売り上げは好調な気がする。元々買われていた世代が当時聞いていた曲を買い直していたり、外国人の客も増えている」とコメント。続けて「うちの店ではそれほど多くはないが、若いお客も増えてきている」と述べる。

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 20歳のころからレコードにハマったという22歳の女性店員は「ちゃんと音楽に向き合えている感じがするところがレコードの良さだと思う」と話す。

 「レトロブームは、この5年間ほど続いている」。そう分析するのは、若者文化を研究する「SHIBUYA109 lab.」の長田麻衣所長。若者たちは昭和カルチャーに何を見出しているのだろうか。長田所長は次のように明かす。

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「一番人気なのはクリームソーダ。“映え”のために喫茶店に行っていたりする。今の若者にしてみれば、デジタルが発展していること、街がきれいになっていることは当たり前なのではないか。そうした“均質化された世界”に生きる若者には『昭和カルチャー』の“みんなで時代を作り上げていく”という手作り感のある部分が新鮮に見えるのではないか。

 Z世代の若者たちは、周りの目を気にして自分の好きなスタイルを貫けない所がある。自分たちと比べて自由にやりたいことを突き詰めていく『昭和アイドル』などは、パワフルで羨ましく思えるのでは」

 そんななか、SHIBUYA109 lab.が発表した「2023トレンド予測」にも昭和アイドルの文字が。そして今年4月29日、そんな昭和アイドルのマインドを受け継ぐグループが大阪でデビューした。

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 ロングブーツにミニスカート、紫のダブルジャケットを着けて昭和歌謡を熱唱する2人組。ネオ昭和歌謡プロジェクト『ザ・ブラックキャンディーズ』。昭和の日にデビューした、ナウいヤングなユニットだ。メンバーの1人、阪田マリンさん(22)に話を聞いた。

「ネオ昭和とは、令和の新しいものと昭和の融合。服装はバブルスーツだが、靴は流行りのものを履いてみたり」

 これまで、SNSでネオ昭和を発信してきた阪田さん。彼女が昭和に惹かれたのは、中学2年生のころ。祖母の家に置いてあったレコードプレーヤーがきっかけだったそうだ。そんな阪田さんは、昭和カルチャーの魅力を「現代にはない“不完全さ”だ」と語る。

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「今は音楽を聞きたいなと思えばアプリですぐに聞ける時代だが、(昔は)レコードからドーナツ盤を取り出して、それをターンテーブルに落として針を置いてやっと音楽が流れる。そういう面で音楽の一つひとつの素晴らしさというか“ありがたみ”を感じる」

 デジタルでコミュニケーションを取ることが当たり前となった現代社会だからこそ、オフラインで何かを生み出す“昭和カルチャー”には魅力と新鮮さが詰まっている。「ザ・ブラックキャンディーズ」は、2年という限られた活動期間で1人でも多くの人に昭和の魅力を発信していきたいと話した。

「今の時代はSNSが発達しすぎている。情報がたくさんある分、見えない何かがあるように感じる。それに対して昭和は、限られた情報しかないなかで得られるものがある。私よりももっと年下の世代にも『昭和にはこんないいところがあるんだよ』『心にジーンと響くところがあるんだよ』というのを知ってほしい」

 人はなぜレトロに惹かれるのだろうか。『ABEMAヒルズ』に出演した精神科医の木村好珠氏は「“懐かしいもの”で、人間は不安や孤独を和らげることができる」と述べ、次のように解説する。

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「コロナ禍で不安や孤独を感じた人は多い。“懐かしさ”という感情にはそれを和らげる作用がある。また『自我関与効果』といって、人間には自分が長く接してきたものに対して好意的な感情を抱く反応もある。レコードや聖子ちゃんカットなど、自分が体験してきたものは昭和生まれにとって“心の距離”が近いのだろう。そうした懐かしいものを改めて楽しむことで経済が回る『ノスタルジアマーケティング』というものもある。

 一方、若者にも昭和カルチャーが人気な理由だが、これは“むしろ新しい”ということではないか。映えがあるクリームソーダなどは、SNSでどうバズるかという若者心にも刺さるのではないか。また、ITで何でもできる時代になって、人の温かみに触れる機会が減った若者には、昭和カルチャーの“手作り感”が新鮮に感じられるのだろう」

(『ABEMAヒルズ』より)

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