「親子で車を追いかけるクマも」人間の生活エリアで相次ぐ「遭遇被害」 なぜ“人の怖さ”を忘れたのか
【映像】親子で車を追いかけてくる“野生のクマ”
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 野生のクマに遭遇する被害が相次いでいる。その被害は山間部だけではなく市街地にも…。クマの出没が頻発している原因とその対策について専門家に話を聞いた。

【映像】親子で車を追いかけてくる“野生のクマ”

 環境省が取りまとめているクマの出没情報件数は、今年4月で541件。去年4月と比べると100件以上も増えている。一体なぜクマの出没が増えているのだろうか。

「それぞれの地域によって状況は異なると思うが、大きく捉えてみれば私たちの暮らし方の変化によって“バッファーゾーン”がここ20~30年のうちになくなってきている」

 そう話すのは、長野県軽井沢町でクマの保護管理を行うNPO法人「ピッキオ」の田中純平氏。人間の生活エリアの拡大や過疎化による里山の荒廃などに加え、クマの分布範囲が年々広がり、それぞれの居住エリアに干渉していることが原因の一つだという。

 続けて、田中氏はもう一つの理由として「クマの駆除方法の変化」を挙げる。

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「現在の駆除方法は『農作物がやられるから畑に罠をかけよう』などの“受け身”なことが多い。罠ではクマにプレッシャーを与えられず、捕まったクマについてもそのまま駆除されるので、残されたクマが何も学んでいない状況だ。受け身的な箱罠による駆除では“人の怖さ”を教えることができない。市街地、中山間地域にかかわらず、行政が食べ物やゴミの管理をしっかり行い、農作物を守る電気柵などを設置するための資金支援をすることが重要だ」

 クマの隠れやすい薮などを減らしていくことも効果的とのこと。このような対策を行った上で、ピッキオでは日本では珍しいベアドッグを活用、市街地に出てきたクマを追い返し、クマに人間の居住スペースを認識させる教育を行っているという。だが、万が一クマに遭遇してしまったらどうすればいいのか?

「全体を見ながらゆっくり下がる。最悪は背中を見せて逃げることだ。クマをよく見ながらゆっくり退散するのがいいだろう」

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 最後に田中氏はクマが絶滅してしまった地域にも触れ、保護管理に取り組むことで人間とすみ分けながらの“共生”を目指していると明かした。

「20年以上かかっているが、すみ分けながらの共生を作り上げてきている。人間界での被害も防ぎながら、絶滅レベルに追い込むことなく、性質の良いクマが残せる状態を目指していくことが大切なのかなと思う」

 相次ぐクマとの遭遇被害について、『ABEMAヒルズ』に出演した元岩手県議で株式会社「雨風太陽」の代表取締役・高橋博之氏は“バッファーゾーン”について、次のように解説する。

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「江戸時代から明治時代に入って、日本人が3000万人から膨れ上がっていく際、野生動物をどんどん押しやって郊外に生活圏を広げていった。そこで農業を始めることになるが、作物は押しやられた動物からすると餌になる。そこでハンターが出てきて動物を仕留め、肉を感謝していただくという循環が保たれていた。

 かつては野生動物の世界と人間の世界の間に里山の“緩衝地帯(=バッファーゾーン)”があって、ハンターが『ここから先に入ったら痛い目に遭うぞ』という警告を発していた。ところが、現在では過疎高齢化でこのバッファーゾーンが成り立たなくなってしまい、野生動物と人間が鉢合わせる事態が起きているということだ」

 続けて、高橋氏は「クマの問題も環境問題の一つであり、全ての人間が“被害者かつ加害者”の構造がある」と指摘した。

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「多くの人が一次産業・農業は大事としつつも『自分たちはやらない』といって人任せにしてきた。その一方で、農家たちが食べていけるような値段で食べ物を売っているのかというと『できるだけ安いものがいい』という。農家からすれば生活が成り立たなくなるので続けられなくなる。その結果、農山村が衰退し、そうした地域にクマなどの野生動物が降りてきているということだ。

 つまり、人間は被害者だけれど加害者側でもある。『中心市街地に住んでいるから、農山村の疲弊には関係ないよ』ではなく“全部が繋がっている”のだと。この構造を理解して、街に住んでいる人も一緒になって考えていかなければならない問題だろう。共生していた時代から学んで、新しい“循環構造”を作っていく必要がある。根本的な解決に目を向けていかなければならない時なのではないか」

(『ABEMAヒルズ』より)

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