「農家の仕事の8〜9割は草取り」→除草ロボットで自動化 開発会社代表「1台をシェアしてOK。日本の農業を若返らせたい」
【映像】ゆっくり動くが生産性は5倍! 除草ロボットの勇姿
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 農業のスマート化を目指して「除草ロボット」を開発した企業がある。日本の農業を若返らせたいと意気込む代表に話を聞いた。

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 田んぼを走る1台のロボット。その名も「ミズニゴール」。田んぼの水をかき混ぜて濁らせることで、田んぼの養分を吸い取る雑草の光合成を遮り除草作業を行うというロボットだ。今年は遠隔操作版を1シーズンレンタルで税込22万円で提供している。

「ミズニゴールの仕組みは、“初期除草”と呼ばれる田植えをしてから40日間の大事な期間に除草することで、雑草が生えることを防ぐというもの」

 こう話すのは、株式会社「ハタケホットケ」の日吉有為代表。ハタケホットケは2021年に長野県塩尻市で設立。農業のスマート化を目指し活動を行っている。

 2020年、コロナ禍を機に塩尻市に移住した日吉代表。会社の設立は知り合いの農業を手伝ったことがきっかけだった。

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「農薬を使わずに家庭菜園を作ると夏場の草がすさまじく、農家さんによると『仕事の8~9割は草取り』。チェーンで引っ張るという除草方法を教えていただいたことで、『機械でできないかな。自動化できるのではないか』と考え始めた。調べてみると製品化されている機械は一つもなくて。たまたま塩尻に何でも作れる発明家の友だちがいたので話をしたらあっという間に試作機を作ってくれた」

 過酷な除草作業を自動化すれば負担を減らすことができるのではないか。そんな思いから会社を立ち上げ開発を開始。資金は、県からの補助金とクラウドファンディングで賄ったという。

 こうして2022年の春、ミズニゴールの実証実験がスタート。ミズニゴールを走らせた田んぼのうち、約7割が草取りを行うことなくシーズンを終えられたという。

「チェーンを背負って田んぼを歩く作業は、人の手だと1回あたり大体1~2時間歩くことになるが、ミズニゴールは15~20分で終わる。生産性は5倍くらいになると思っている」

 今後はGPSの導入による“完全無人化”やどんな形状の田んぼにも対応可能にしていきたいと話す日吉代表。全国に普及させていきたいとして、その意気込みを語った。

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「1台を5~6人でシェアして頂ければ1世帯あたりの負担を減らすことができる。今までの農業のカルチャーにはなかった“農業機械のシェア”などもやっていきたい。農業が省力化できるようになれば、『やりたい』という若い人も増えていくのではないか。これからの日本の農業にも貢献していきたいと考えている」

 こうした取り組みについて、『ABEMAヒルズ』に出演した元岩手県議で株式会社「雨風太陽」の代表取締役・高橋博之氏は「素晴らしい取り組みだが、省力化にも限度があるだろう」として考えを明かす。

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「日本は今まで外からの輸入に頼っていたが、買い負け始めている。外から買えないとなると国内で作らなければならないが、生産地を見るとほとんどが高齢者で人手不足なのが現状だ。こうしたロボットや外国人労働者も含め、“総力戦”で第一次産業を支えなければならない時代だ。

 だが、ロボットを使った省力化は対症療法だ。自然が相手になるので機械が全てを担えるわけではない。どうしても人がやらなければならない部分がある。そこで働く人の生活も考えていかなければならない。人がいなくなれば学校は閉鎖され、子どもを育てられる環境がなくなる。生活が成り立たなければ、省力化もへったくれもない。両方を考えるべきなのではないか」

 続けて、高橋氏は一次産業の人手不足解消に向けた取り組みとして「農家だけが農村を守るのではなく、“賑やかな過疎”を形成していくべきだ」と指摘した。

「働き方改革や週休3日、副業やワーケーションの選択肢として、都市在住の労働者が時々、農村に来るのはどうだろうか。素人でもできる仕事はたくさんある。土いじりをすることでリフレッシュし、健康になって都会に戻ればまた生産性の高い仕事をすることができるだろう。農家の人手不足解消にもなるし、都市では得難い経験をすることができるはずだ。

 生産者の人たちは、育てたものの価値を表現することが苦手だ。しかし、都市の住民はマーケティングやブランディングも得意だろう。都市にいながら高く売るための支援をして間接的に助けることもできるのではないか。鎖国してしまっているような農村を多様な関わり方で開国して、“賑やかな過疎”という状態ができれば、食べ物を作ることの大変さもわかり、『今の値段のままでいいのか?』という適切な価格形成の議論にも繋がっていくだろう。まずはいろいろな形でかかわってほしい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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