6月に入って解散を“匂わせる”発言をしていた岸田総理が、態度を一転。「今国会での解散は考えておりません」と述べた。『ABEMAヒルズ』では、二転三転する発言の狙いと“本当の解散時期”について、東京工業大学の准教授で社会学者の西田亮介氏に聞いた。
4月の統一地方選挙や5月のG7広島サミット後には「いまは“解散総選挙”について考えていない」と話していた岸田総理。しかし、6月13日に「情勢をよく見極めたい」として解散を匂わせる発言をし、その後15日に改めて「解散は考えていない」と明かした。
岸田総理が“解散”をしないと明言したことについて、西田氏は「解散を秋に先送りしても十分だと判断したのではないか」と推測する。
「実際、発言の直前までどうするか様々な選択肢があったと伝え聞くし、メディア各社も様々な構えをしていた。G7広島サミットに対する国内外での受け止められ方を見ると、かなり評価が高かった。野党の候補者擁立も実際には進んでいない。そんななかで解散総選挙をして、そこに勝ちきって岸田政権の求心力を高めたい考えはあったはずだ。野党も含めて腰砕け感があったはずだ。
では、なぜこのタイミングで急に明言したのか。1つ考えられるのが、短期的に見ると岸田総理はやりたいと思っていたことが大体できたということ。2つ目は『秋に先送りしても、十分な勝機がある』とそろばんを弾いたからではないか」
続けて西田氏は、解散をしない理由を次のように分析する
「解散があるかもしれないと匂わせることで、総理あるいは自民党、それから、自民党内の岸田派の求心力を高めていく考えがあるのではないかと推測する。例えば『解散があるかもしれない』となると、候補者を立てていかなければいけない。例えば山口3区では、岸田派の林外務大臣が小選挙区から出ることが決まり、安倍派が推していた吉田真次氏は比例に転出となった。解散風を吹かせながらも岸田総理周辺の有利な形ができた。
それからリスクヘッジの観点だと、自民党それから政府に関係する“スキャンダル”が出てきているというのもある。マイナンバーカードの様々な不備が出てきていること、自民党と公明党の関係悪化などがある。改善の目途が見えてきたが、公明党と支持母体の創価学会は選挙が連続することを嫌いがちだ。選挙が続くと肉体的に消耗するからだ。人間的な理由だがそれらも含めて総合的に勘案した結果『今でなくともいい』となったのではないか」
さらに西田氏は、解散総選挙をする日取りについて、予想を明かした。
「こうした話題を問われるとき、ぼくはいつも『ある』と言ってみることにしている(笑)。『解散しなければ、自民党内や政府での求心力を保つことができない』ということは間違いない。岸田総理は自民党総裁でもある。選挙の顔として総選挙を戦うことができれば、自民党の中の派閥を越えて求心力を強めていくことに繋がる。来年秋の自民党総裁選で有利に戦って再選することを念頭に置くなら(解散時期は)やはり年内ではないか。
解散宣言をして実際に選挙をするには1月ほどかかる。それを踏まえて合理的に考えるのならば、9月に行われる臨時国会の前後ではないか。今年はG7関連の閣僚会合が1年を通して行われているが、7月~10月にかけてぽっかりとスケジュールが空いているが、その頃の解散が最後の時期でもある」
さらなるスキャンダルで支持率が低下する懸念はないのだろうか?
「重要なのは、選挙が“相対的な戦い”であり、相手の状況も併せて考える必要があるということだ。例として、勢いのあった『日本維新の会』をみると、地方選挙でも議席を倍増し、補選でも和歌山などで議席を初獲得した。しかし、今後は本当に全選挙区に候補者を擁立できるのかという課題もあり、もしかすると今がピークで、徐々に下がっていくのではないかとも考えられる。これは『立憲民主党』『国民民主党』など、ほかの野党を見ても同様だ。
“野党共闘”の土壌もできていないようだ。こうしたことから『野党の状況は秋口になっても改善しないのではないか』という見立てができる。加えて、自民党と公明党の関係は時間が経つことで修復されていきそうだ。なので、自民・公明党にとっては、ちょっと先送りした方が有利で、今ではなくても不利にはならないと判断したのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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