将棋の藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)が6月20日、王座戦挑戦者決定トーナメント2回戦で村田顕弘六段(36)に勝利し、4強入りを決めた。年度内での全八冠制覇に向けた重要な一局とあり大注目の中で行われた本局は、藤井竜王・名人が中盤以降劣勢に追い込まれる展開に。しかし藤井竜王・名人は、最終盤で繰り出した勝負手からあまりにも鮮烈な逆転劇を演じ、解説陣を「なんですか、これは…」と絶句させていた。
藤井竜王・名人がまたひとつ伝説級の一局を見せた。本局は、七冠保持者の最後の関門となる「王座」のタイトル挑戦を目指す挑戦者決定トーナメント。2回戦では、角道を開けずに相手の出方次第で自在に対応する“村田システム”を編み出した村田六段との対戦となった。振り駒の結果、村田六段の先手番となると、相掛かりの出だしから進化版の「新・村田システム」を若き絶対王者へぶつけてペースを握った。
「昼食休憩あたりはまずまずだと思っていた」と村田六段がじわりとリードを拡大。藤井竜王・名人の持ち時間を大量に削り取り、慎重に優勢を築いていった。藤井竜王・名人も「中盤からはっきり苦しくしてしまった」と劣勢を意識しながらの戦いながら、攻めの姿勢を貫き反撃への道筋を模索。詰将棋の名手でもある村田六段がこのまま押し切るかと思われた終盤で、ドラマが待ち受けていた。
寄せを目指した村田六段は最後の大長考で1時間7分を投入し、攻防に利きが通る角を着手。勝利まであと一歩と迫り、最後の持ち時間を投入した。しかし、先に一分将棋に突入していた藤井竜王・名人がただの地点に銀を進める勝負手を繰り出す。この一手に、ABEMAの中継に出演した千葉幸生七段(44)、本田小百合女流三段(44)は「なんですか、これは…」と絶句していた。さらに後手は香車で追撃。ここでABEMAの「SHOGI AI」は一気に藤井竜王・名人側へ傾いた。
「SHOGI AI」が描く評価値グラフは先手の村田六段の勝利に向かって右肩上がりの曲線を描いていたものの、後手に向かって一直線。視聴者からは「評価値おばけフォーク」「ナイアガラの滝w」「脳内どうなってるん!?」「バンジージャンプw」「一分将棋の神様」「終盤力えぐすぎる」「どうしてこうなった」と大興奮のコメントが殺到していた。藤井竜王・名人は、「終盤も苦しい局面が続いていて、最後の最後に勝ちになったのかなと思った」と大逆転から先手玉を詰みに討ち取り、勝利をもぎ取った。
プロをもってしても「芸術的な詰み」「すごいものを見た」と驚愕する藤井竜王・名人の終盤力。大熱戦を繰り広げた村田六段は「自分が全く見えていなかった手で“勝負勝負”と来られて、藤井七冠に勝つ大変さを思い知らされた」と振り返っていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)