武器輸出なら“死の商人”に? 松川るい議員「防衛装備品の移転は平和に資する」日本流の軍事支援のあり方は
【映像】激論 日本は「武器を送れる国」なのか?

「日本、ウクライナの在庫増強のためアメリカへの砲弾提供を協議中」。先週、アメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』が報じた記事の見出しだ。ウクライナの反転攻勢に合わせ、弾薬の共有を認める日米の安全保障協定に基づき、日本がアメリカへの砲弾供給を検討しているという。

【映像】激論 日本は「武器を送れる国」なのか?

 しかし、先月16日に真偽を問われた浜田防衛大臣は「日本が155mm榴弾をウクライナもしくは米国に提供することについて合意したという事実はない」と否定。

 これまでアメリカやイギリス、ドイツなどが、最新鋭の戦車やミサイルをウクライナに提供している。そんな中、日本は防弾チョッキやヘルメットの供給、最近ではウクライナの負傷兵を受け入れるなどの支援に留まっている。

 『ABEMA Prime』では、戦いが長期化する中で、日本の武器輸出の是非と支援のあり方を考えた。

▪️日本は「武器を送れる国」なのか?

 今回の報道について、元防衛大臣政務官で自民党の松川るい参議院議員 は「『合意した事実はない』というのは、まさにその通りだと思う」とした上で、砲弾の提供は「現時点では可能ではない。一目瞭然にそれができるような協定や法律上の根拠はない。また、武器輸出三原則の運用指針があり、アメリカは同盟国なので特別に可能なこともあるが、具体的なケースが書いてあるわけではない。アメリカに渡すにしても工夫が必要だろう」と述べる。

 防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」によって、戦車やミサイルなど殺傷能力のある武器の輸出が制限されている。そんな中、自民党と公明党が4月、運用指針の見直しに向け協議をスタートした。政府与党内では「殺傷力のある武器の輸出に対して禁じられてはいない」との見方が出始めている。

 松川氏は「輸出が認められている防衛装備品は、救難・輸送・警戒・監視・掃海に限定されているが、この5類型では狭い。今後新しい技術を使った装備品が出てきて新しい戦い方になる中で、大きな制約になってしまう。運用指針の見直しは決まっていて、『どこまで、どう広げるか』を議論している」と説明した。

 見直しが進めば日本が「死の商人国家になる」と懸念を示す、武器取引反対ネットワーク代表の杉原浩司氏は「砲弾は難しくても、火薬は日本の企業で調達する目途が立ったので送る方向だ、という報道が出ている。間接的であれ日本からアメリカに出した火薬、あるいは砲弾が実戦で使われることは蓋然性が高い。これは異例なことだし、国会で議論する前に、議論ありきで水面下で進めているのは民主的な手続きとしておかしい」と疑問を呈する。

 松川氏は「日本はすでにできる範囲で色々な支援をしていて、それらがヨーロッパなどと同じである必要はないと思う。弾薬は武器だけれど、補給品とも考えられ、個別具体的に考えるべきだ。ウクライナについて考える時も、輸出した際に受けるマイナスと、達成できること、平和に近づくのかどうかを慎重に考える。最初からできる・できないというゼロイチの議論はよろしくない」と応じた。

 日本が武器を提供することで何が失われるのだろうか。杉原氏は「アフガニスタンや東南アジア、イラクなど、さまざまな国際協力の現場でやってきたNGOの方に話を聞いた。戦争に直接加担したり武器を送ってきた欧米の国とは違って、日本は憲法9条を持っていることに加え、広島と長崎が復興してきたという平和的なイメージとブランドがある。そのことが、現場で支援に関わった人たちの身を守ってきたことは今でも言われる。日本がもし武器を輸出して、それが他国の人々を殺傷することに使われたとなると、現地の人たちからの視線が変わってしまう」と危惧する。

 対して松川氏は「ロシアは間違った使い方をしているが、武器は侵略するためにあるのではなく、自国を守るためにある。たしかに日本は憲法9条があり、他の国とは異なる様々な制約があるが、今回は明らかにウクライナが侵略されている側だ。防護服もダメ、車両もダメという議論は、現実を全く直視していない」と述べた。

▪️日本はどこまで支援するべきか?

 ここから先、日本はをするべきなのか。
 
 松川氏は「例えば、火薬はいいと思うが、弾がいいのかという議論は確かにある。どちらにせよ、輸出する先はウクライナではなく、現時点ではアメリカしか考えられないだろう。また、アメリカも自国の分を随分出して枯渇しているため、『同盟国からの要請で助ける』という理屈のつけ方はあると思う。とはいえ、ロシアからさらに厳しい反応がくるため、覚悟する必要がある。現時点で簡単に決めることはできない」との見方を示す。

 また、輸出するメリットについて、「今本当にウクライナが欲しているもの、いわゆる支援物資以外のものも含めて日本が供与することは、NATO諸国やアメリカからしてもありがたいはずだ。将来、“日本が本当に困った時”に何らかのいい影響があるかもしれない」と述べた。

 これに対し杉原氏は「ウクライナは自民党よりも日本のことをよく分かっている。ゼレンスキー大統領はG7サミットの時も含めて、武器供与を求めたことは一度もない。3月に来日したハブリロフ国防次官 もテレビのインタビューで、日本に対して通信・医療・運輸の支援を求めている。その国に合ったかたちの支援と言っているにもかかわらず、ウクライナが欲しているから出すべきだという議論は問題がある」と反論。

 松川氏は「武器輸出、防衛装備品の移転は平和に資する。インドがなぜロシアに対して“特別な対応”をしているかといえば、ロシアの武器に依存していることが大きい。そこに日本の船やレーダーを使うということになれば当然、整備や技術協力も生じて防衛協力が進化する。さらに、第一列島線にあるフィリピンとインドネシアが日本の装備品を持てば、シーレーンは守られるし、その国にとっても安全が高まるのはいいことだ。私は防衛装備品の移転が即、平和国家の在り様に反するという議論自体がそもそも間違っていると思っている」との考えを示した。

(『ABEMA Prime』)

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