計量失敗2.9キロ差、2階級上の相手と戦う前代未聞のハンデマッチに試合前から会場は大ブーイング。それでも足を止めて覚悟の打ち合いを制した新王者は、試合後「ここで戦う僕たちしかわからない部分はある」と相手をリスペクト。両陣営で握手を交わし認め合うエンディングに「いい試合だった」「これがスポーツマンシップ」と称賛の声が寄せられた。
【画像】フランコを“ベロ出し”挑発する井岡 試合後はノーサイドのハグ
6月24日に東京・大田区総合体育館で開催されたWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦、ジョシュア・フランコ(アメリカ)と井岡一翔(志成ボクシングジム)の対戦は、判定3-0で井岡が新王者にとなり、体重超過の相手と戦うハンデマッチを制して王座返り咲きを果した。
前日計量で王者フランコが2.9キロ超過でタイトル剥奪、当日計量でフランコがリミットとなる130ポンドをクリアして試合を実施することで合意した。井岡勝利の場合は新王者、引き分けもしくはフランコ勝利の場合王座が空位となる異例のタイトルマッチだ。
試合としては明らかに井岡不利の状況に、フランコへのブーイングが鳴り止まない不穏な空気のなかゴングが鳴る。軽い左ジャブ連打のフランコに対し、井岡は打ち終わりにボディを散らしながら返しの左フックを見せる。2ラウンド、接近戦でフランコが井岡のボディを嫌がり後退するシーンも見られる。
フランコも連打を見せるが、井岡が一貫してボディ攻撃。5ラウンド足を止めての打ち合いでフランコが右目尻をカット、井岡が左フックを7連続で当て気迫の攻撃を見せる。
前に出続けるアグレッシブなフランコに対し、井岡は9ラウンド、アッパーとボディなど効果的な攻撃を重ねていく。ラウンド途中にはスウェイバックでフランコのパンチをかわすと、笑顔で頭を振り、舌を出して挑発する場面も見られた。
11ラウンド、攻撃に陰りが見えたフランコに対し、井岡は着実にボディとアッパーで削り続ける。最終ラウンド、井岡のボディに再三フランコが下がるシーンを見られるなかで試合は終了となった。
判定結果は3-0で井岡の勝利。手数で稼ぐフランコに精度の高いパンチやボディを当て続け、後半は失速ぎみの相手を振り切った。ABEMAのゲスト解説・内山高志も「相手の体重超過の(不利な状態)しっかり結果を出した。井岡一翔がまだまだ強いことを証明した」と賞賛。ゲストの千原ジュニアは「(5ラウンドの)左の6発、7発に覚悟を見た」と足を止めて強気で打ち合った場面をハイライトに挙げた。
勝利者インタビューで井岡は「あの日(引き分けの大晦日)から諦めずに今日まで色々なことがありましたけど、チャンピオンに返り咲くことができました」と涙を流しながら報告。
大幅な体重超過で試合に臨んだ元王者フランコについて「条件は不利だったのでは?」と聞かれた井岡は「(フランコは)グレートなチャンピオン。2度も日本に来てくれて、日本は環境は整っていますが、アウェーなので不安だったりナイーブな気持ちになっていた部分はあると思う」と相手の立場に理解を示しつつ「ここで戦う僕たちしかわからない部分はある、拳を交え戦い抜いてお互いやり尽くしたので、僕も満足はしている」とコメント。
井岡は「皆さんチーム・ジョシュア・フランコに大きな拍手をお願いします」と陣営への気配りも見せ、この言葉に敗れたフランコもハグで新王者を迎え、それまで大ブーイングだった観客も拍手で反応。王座剥奪〜体重のハンデありと不安要素しかない滑りだしから、最後は両陣営がノーサイドで握手を交わす結末に視聴者からも「いい試合だった」「人格者」「これがスポーツマンシップ」「心技体、井岡の方が上だった」と賞賛の声が並んだ。