子どもを持つ親にとっての永遠の悩みである子育てと仕事の“両立”。教育経済学が専門の慶応義塾大学教授・中室牧子氏が出産による所得の変化と出生率の関係について、いくつかの研究データを明かした。
【映像】出産で所得65%減 日本では女性だけ「チャイルドペナルティ」とは
まず、中室教授が明かしたのは育休の長さと就業や賃金についての研究。経済学で行われた研究によると、育休が1年以内の場合は、復帰に大きな影響はないそうだが、1年以上になると賃金や就業にマイナスの影響があるというのだ。
「長く仕事から離れることで、自分の知識やスキル、仕事の習慣が失われてしまい、マイナスの影響に繋がるということだ。仕事の習慣やスキルや知識は“財産”だ。それを失わせないようにトレーニング機会はもっとあるべきだと思う。復職してキャリアを続けていくことを“当たり前”にできなければならないのではないか。そのことに殊更の努力を求めなければならない現状にそもそも問題がある」
「日本社会の仕組み自体を改めなければならない」。そう話す中室教授は、“女性のチャイルドペナルティ”という研究について説明する。
「チャイルドペナルティとは、簡単に言うと『子どもが生まれた後にどれくらい労働所得が減ってしまうか』だ。財務省財務総合政策研究所の古村典洋氏の研究データを見てみると、出産の1年前から所得がくっと下がり始めている。グラフで日本は青線で示されているが、大体60~65%減になっている。デンマークやアメリカと比べても、日本の落ち込みは大きい。実は日本の特徴として、こうした賃金の低下は女性にしか起こらないというのがある。『子どもを持つことが、男女の賃金格差の大きな要因となっていることを説明しているのではないか』というのが最近の研究の含意だ。
さらに、こうしたチャイルドペナルティがひどい国は“出生率が低い”傾向があるそうだ。ドイツや日本の出生率が低いのは当たり前ではないか。『子どもを生んだら賃金が下がります』と言われたら、女性の多くが考えたくなるはずだ」
最後に、中室教授は次のように訴えた。
「『家事代行を使いましょう、子どもを保育所に預けましょう』。その通りだと思うが、自分の給料全部をそうしたサービスにもっていかれたという話もある。そうした状況が『何年続くのだろう…』と鬱々する気持ちもよくわかる。政府は、家庭の経済的負担を下げようと児童扶養手当の増額を検討しているが、もっといろいろなことをやってほしい。保育所の整備や、学童に入れない児童も大勢いるので学童も整備してほしい。規制緩和を進めて外国人労働者を受け入れ、家事代行サービスの料金が下がるよう促してほしい。これらは政府にしかできないことだ。その上で児童手当が増えれば家庭の経済的負担は減るかもしれない。
現状、学童はいっぱいで保育所は待機児童の列ができている。そして、家事代行サービスなどは“高い”。それら全部を『自分で働いて賄ってください』というのは、ほとんどの人が辛抱できないと思う。母親がどんな選択をしても後ろめたくないような方法で子育てができるようになれば出生率も上がるのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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