めまい、頭痛、体のだるさなど、約200種類もあると言われる「更年期」の症状。いま、激変する体調に悩まされ仕事を辞めざるを得なくなる「更年期離職」が増えているという。国を揺るがす経済損失の実情を取材した。
【映像】「外でふらふら」「駅のベンチに座ったまま...」更年期離職者の実態
「説明ができないような息苦しさ。息を吸うのがこんなに大変なんだ…生きているだけで精一杯という状態」
こう話すのは、更年期障害で苦しんだ経験があるという恵子さん(仮名)。息苦しさや極度の冷え、精神的な落ち込みなど、症状のピークは45歳。高齢出産だったため、子どもの育児と更年期が重なり、肉体的にも精神的にもどん底だったという。仕事が好きで、職場復帰も考えていたがあまりの体調の辛さに断念したそうだ。
「市販の薬を飲んでもまったく改善せず、むしろどんどん気持ちが落ちていく。本当にやりようがないが、子育てや家事はやらないといけない。毎日必死に生きていた。生きているだけで精一杯、その状況でさらに仕事の負荷がかかるとなるとちょっと無理かなと。仕事のストレスで悪化する可能性のほうが高いと思った」
また、症状の辛さをわかってもらえず、会社側の都合で離職に追い込まれたケースもあった。
コールセンターに契約社員として勤めていた博美さん(仮名)は、更年期の症状がひどく、歩くことすら危うい状況だったという。しかし、勤務先から告げられたのは「出勤率90%を切ると雇い止め」という宣告。体調の辛さを訴えても「治してください」の一点張りだったそうだ。
「めまいがすると外でふらふらになる。出勤時には駅まで何とか辿り着いたものの、そこで動けなくなって、ベンチに座ったまま『遅れます』と電話することも多々あった。非正規なので、正社員ほどの有給も割り当てられていない。使い切ってしまうと『病欠』か『遅刻』にするしかなく、どうにもならなかった」
病欠が増え、出勤率が90%を切るようになった博美さん。会社から「雇い止め」を宣告され、約3年勤めた会社を辞めざるを得なくなった。現在は個人で加入できる労働組合「総合サポートユニオン」に登録し、会社と交渉を続けているという。
「面談時、こちらがどれだけ一生懸命訴えてもメモの一つも取らない。上に上げるシステム自体がないので、そこでシャットダウンされる。専門の部署みたいなものがない限り、信頼できる人が一切いない状態なので相談も難しかった」
更年期の症状が原因で仕事を辞めてしまう「更年期離職が年々増えている」と話すのが、昭和大学の有馬牧子准教授。更年期の症状で治療の必要があると見られる人(40歳~59歳)の約5人に1人が離職の壁にぶつかっているとして、その現状を明かす。
「私が以前に行った調査では『更年期で離職した』という人は全体の約10%、『離職を考えた』という人と合わせると約20%が該当していた。ホルモンの分泌が減ることで、男性でも更年期のような症状が出る。年齢もだいたい40代で起きてくることが多い。また、男性は女性とは違ってメンタルや男性機能などの症状もある」
更年期離職した男性は、女性とほぼ同じ割合の7.4%。この離職率から更年期離職をした人数を算出すると、40~50代で女性が45.9万人、男性が10.6万人、その経済損失額は男女あわせて6300億円にもなるという。
「本当にもったいない。企業だけではなくて社会全体の損失だ。職場で更年期の取り組みを何もしなかったり、自分で気が付いてセルフケアをしなかったりすると、さらに増えていくと思う。更年期について相談できる体制や、経験のある先輩がいて悩みを共有できる環境があるのか、不調があっても休みやすい勤務体制や受診のための休暇制度を利用できるかどうかなど、どれくらい柔軟にできるかどうかが大事だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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