ツール・ド・フランスは自転車ロードレースの選手なら、誰もが憧れ、誰もが出場を夢見るレースであるがために、選手はギリギリまで自分を追い込み、落車の発生も上がる傾向にある。特に第1ステージは、ステージ優勝と共にマイヨ・ジョーヌ着用の権利も得られるため、集団が非常にストレスフルとなり、大落車が起きたことが過去に何度もあった。
今年もその最初の犠牲者となったのが、なんと、東京五輪金メダリストのリチャル・カラパスだ。カラパスはフィニッシュまで残り22㎞付近のカーブで、エンリク・マスと共に落車。マスも総合ベスト3入りも可能な選手で、二人は全身を路面に強打させ、マスは肩甲骨骨折でその場で病院送りに。カラパスはかろうじてスタートして15分24秒遅れの153位でフィニッシュしたものの、レース後の精密検査で膝蓋骨に小さな骨折が見られ、第2ステージをスタートしないことを決定した。
マスは自分でも重傷であることがわかったのか、コース脇で目を見開いて、ただ茫然と立ち尽くすしかなかった。カラパスは膝を抱えて路上でのたうち回り、膝はパックリと割けているのが見て取れたが、顔をゆがめながら自転車にまたがり、ボトルの水で血を流し流し、先を行く集団を追った。膝の傷は結局、3針縫うことになったという。
カラパス所属のEFエデュケーション・イージーポスト、マス所属のモビスターチームは、ツール初日にしてエースを失う結果となった。