6月27日、北アフリカ系の17歳の少年が検問中に至近距離から警察官に射殺される事件があった。それを受け、フランス全土で抗議活動へと発展し、1000人を超える逮捕者が出ている。
『ABEMAヒルズ』では、フランスを始めヨーロッパ事情に詳しいジャーナリストの増田ユリヤさんに話を聞いた。
――抗議デモと暴動はなぜここまで激化した?
「警察が自分たちに都合のいい発言をしていたことが、後から出てきた映像によってウソだと判明。政府や警察に対する不信感から暴動となった。そもそもフランスの社会の中で移民の人たちは差別的な扱いを受けており、その怒りと苦しい経済状況や若者の不満が結びついて今回の暴動につながった。また、SNSでの映像拡散も大きな原因の一つとなっている」
――フランスでは国を担う人と労働者と分断するような社会システムがあるが、それも今回の件に影響しているのか?
「フランスでは非常に難しい試験を突破しなければ大学に進学できないが、アフリカなどからの移民の家庭はどうしても地元住民と比べて教育に対する意識が低くなりがちだ。そのため移民の子どもたちは勉強で成果を上げることが難しく、学校もドロップアウトして、良い職に就けず、不満が募るという悪循環が繰り返されている」
――2005年に同じような暴動があったそうだが。
「当時の内務大臣だったサルコジ氏の発言がきっかけで1カ月近く暴動になった。その時には失業手当とともに教育困難な地域に対してお金や人を投じるという教育改革があったが、なかなか定着しなかった」
――フランスの人種差別の現状は?
「徐々に良くなってきているが、差別はなんとなく感じているはず。就職試験などであからさまな差別こそないものの地元住民と比べたら不利な立場に置かれているのではないかという“なんとなく”の不満が、何らかのきっかけで爆発する。特に若い人たちは暴動に走りやすい」
――ヨーロッパで移民が多いドイツとの違いは?
「ドイツでも暴動やデモはあった。しかし、どんな厳しい状況におかれた家庭にもちゃんと食事と寝床が確保されていた。きちっとやることはやるということと、抑制的な国民性が影響し、深刻化を防いでいると思う」
――日本も外国人労働者は増えていると思うが、今回のことは他人事ではない?
「『差別はダメだけど私たちはやっぱり嫌』という感情もあると思う。それでもコミュニケーションをとってお互いに納得し、小さいことでも積み重ね、折り合いをつけていくことがうまくやっていくためのポイントとなる。私たちも覚悟して取り組んでいかなければならない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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