自然とそうなったのか、それとも考えた上でのものか。実力者の考慮姿勢がなんとも特徴的だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Eリーグ第1試合、チーム渡辺とチーム千田の対戦が7月8日に放送された。第7局はチーム渡辺・佐々木勇気八段(28)とチーム千田のリーダー・千田翔太七段(29)という同学年対決。スコア3-3というタイスコアで迎えた一局でもあり、両者ともに序盤から熟考することになったが、千田七段のポーズが実に個性的。控室で観戦していた渡辺明九段(39)からも「出た、千田ポーズ!」と声が飛ぶと、ファンの反響を呼ぶことになった。
将棋は盤面に向かって座りながら考えるものだが、基本となる正座だけでなく、あぐらをかいたり前後に揺れてみたりと、様々なパターンがある。藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)は少し揺れながら、手元にある扇子をくるくると回す。また名人経験者の佐藤天彦九段(35)は、脇息にぐったり持たれたり、深く沈み込むようなポーズになったりするため、ファンから「ぐで彦」と呼ばれることもある。
大会初出場となった千田七段は早指しの朝日杯将棋オープン戦で優勝歴があるほか、将棋ソフト(AI)による研究の先駆者として知られ、その戦いぶりが注目され、またチームメイトたちとの楽しげなやりとりが、初戦から好評を得ていた。そこに来て見せた「千田ポーズ」だけに、反響も大きなものだ。
左膝を立て、そこに左肘を乗せ、さらに左手首を曲げながら手を額に当てる考慮姿勢。有名な像「考える人」を想像させるようなポーズだ。控室で見ていた渡辺九段は「出た、千田ポーズ!」と反応、「考える人みたいな。超悩んでいるのが相手にバレる(笑)」と楽しげに続けると、ファンからもコメントが続々。「哲学者か」「千田さんいちいち面白い」「考える千田かっこいいな」と盛り上がった。なお、この一局は落とした千田七段だが、スコア3-4とカド番に追い込まれたところで自ら連投を志願し、渡辺九段に快勝。最終局も同門の先輩・西田拓也五段(31)が佐々木八段を下し、チームとしては逆転勝利。千田七段にとっては悩んだ甲斐が報われるうれしい展開となった。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)