1対1のトレーニングや食事指導を受けるパーソナルジムで、器具による事故や筋肉を傷めるなどの健康被害が相次いでいる。これに消費者庁は、実態や事故原因についての調査を始めると発表した。
【映像】完全糖質カットで上半身に湿疹&茶色いあざも(実際のトラブル例)
国民生活センターには「バーベルを持ち上げる動作で肩の筋肉を傷めた」「きついスクワットで筋肉痛が2カ月以上抜けない」「ジムの食事制限で上半身に湿疹が出てあざのような跡が残った」などの声が寄せられているという。相談件数も増加傾向だ。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、2000年で1億1524万人だったフィットネスクラブの年間のべ利用者数は、2022年になると2億1042万人と激増。また、コロナ禍を経て、3密回避の意識・健康意欲が増進し、多くの人との接近を避けて健康維持できるパーソナルトレーニングが人気を集めているという。また、月々の会費を払えば、自由に設備を使って良い、トレーナーがいないといったジムもある。
トラブルの背景には何があるのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、ジムを経営する現役のパーソナルトレーナーと共に考えた。
相談の中には「バーベルを持てない」と断ったのに「メンタルの問題だ」と言われ、続けたら右肩腱板炎になってしまった事例もある。
これに東京、埼玉、岐阜でパーソナルトレーニングジム「Sharez」を運営している、パーソナルトレーナーの岡崎秀哉氏(ビーサバイ株式会社代表)は「知識と経験があれば防げる内容だ」と話す。
「2010年過ぎくらいから、パーソナルトレーニングジムやトレーナーの数がすごい勢いで増えた。だから、相談件数も増えているのではないか。トレーナーは資格がなくてもできる仕事で、未経験で始める人もいる。資格も民間団体のものだ。僕は一定数の資格を持っているが、国が定めているものはない。一方で、品質の部分はそれなりの知識と経験が必要だ。シチュエーションを詳しく聞かないと分からないが、短期集中型で高額な金額だと、お客様もトレーナーも結果に意識が向き過ぎて、安全面が疎かになることがあるのではないか」
岡崎氏によると、ジムによっては民間団体の資格を必須にしている場合もあるという。
「民間資格は1980〜90年代にアメリカから入ってきたものが多く、当時はパーソナルトレーニングがそれほど流行っていたわけではない。どちらかというとスポーツ指導に準拠したような資格になっていて、現代のニーズであるダイエット指導とか、ボディメイクなどの指導にフィットしていない内容になっている」
パーソナルトレーニングを行うにあたって、資格は必要だと思うか。
「最低ラインは必要だ。看護師や医師、あるいは整体師と似たような部分もある。これらは基本的に国家資格がある。脊髄の問題になると、後遺症が残ることもある。国家資格と言えなくても『この基準を満たしていないとトレーナーにはなれない』『ジムを開業できない』といったラインはあったほうがいいと思う。NSCA(※ナショナル・ストレングス・アンド・コンディショニング・アソシエーションの略)は、僕らの業界ではかなり有名な民間資格で、トレーナーの一番メジャーな資格になっている。これを持っている人はちゃんと資格の勉強をした人だ。ただ、座学だけで取れる資格で、現場の実地テストがあるわけじゃない。正直、品質としてはどうかと思っている」
トレーナーが増えている今、岡崎氏は「どうやって集客して売り上げを作っていくか。各社、各トレーナーの意識は、今そこに強く向いていると思う。安全面、要はネガティブを減らす動きに対しての動きはあまり目立っていない」と述べる。
プロスケーター、元フィギュア世界女王の安藤美姫氏は「1対1だからこそ、こういう問題は起こしちゃいけない」と指摘する。
「きついスクワットをやって2カ月も筋肉痛が抜けないのは、肉離れかもしれない。もはや筋肉痛ではなく、けがだ。『1対1だから安全面が疎かになる』は、私の中ではあり得ない。例えば『1人で何人も見ていて安全面が疎かになっている』ならわかるが『1対1で安全面が疎か』は相当ヤバいと思う。1対1なら、受講者のその日の健康状態や、痛い部分にしっかりと向き合えるはずだ」
また、過度なトレーニングやリハビリで故障する選手について、安藤氏は「選手の気持ちが強すぎる時もある」と話す。
「この場合、コーチではなく、自分で追い込んでしまう選手がほぼ悪い。私はフィギュアスケーターで、アスリートの友達もいるが、ほとんどのコーチは『これは最後の試合じゃない』と止めると思う。どの世界にも言えるが『追い込まないと効果が出ない』は、もはやトップじゃない」
(「ABEMA Prime」より)
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