盗撮の手口が悪質化し、被害が急増している。警察庁によると、2021年の盗撮事件の検挙数は5019件と、10年前の2.6倍に及んだ。
【映像】「こわっ…」スタッフが驚いた“ペン型カメラ”で撮影した映像
今年(2023年)6月、「盗撮のカリスマ」と仲間から呼ばれていた51歳無職の被告に、静岡地裁が懲役2年10カ月の実刑判決を下した。被告は全国の露天風呂で高性能機材を使い、約100メートル離れた木々に囲まれた場所から女性を繰り返し盗撮。迷彩柄の布を身にまといカモフラージュしていたという。
「20歳から盗撮を始め、少なくとも1万人以上を盗撮した」(「盗撮のカリスマ」と呼ばれた被告)
盗撮犯のトップクラスになると、画像や動画をネットで販売して、1億円以上の売り上げがあるという。
一体、どんな場所で盗撮被害に遭いやすいのか。探偵業のかたわら、盗撮被害者の相談を受けて現場の調査などを行う、全国盗撮犯罪防止ネットワークの平松直哉代表に話を聞いた。
「昔はトイレとお風呂と限られたものだった。それがもう今は、家庭内盗撮から始まって、病院内の盗撮とか、ジャンル分けができないくらいある。全ての空間においての映像があるのでは」(平松氏)
盗撮被害の現場が増えた要因には、カメラの進化もあるという。平松氏が「普通にあったらわからないでしょ?」と見せるのは、シャンプーの容器に小さな穴をくりぬいて作った盗撮カメラ。過去に、浴室に置いたままにして、無防備な姿を盗撮する手口が横行したそうだ。内部には小型電池のほか、メモリやマイク、そしてカメラが仕込まれている。
「Wi-Fi(でデータを)飛ばして、本体に記録映像を残さないタイプもある。現行犯で押さえる以外、捕まえられない」(平松氏)
日常生活にもカメラが潜んでいる。
「電車で携帯電話を触っている風に見えても、ここ(膝の上に置いた充電器)でも撮れている。まずわからない。(画質は)4Kとかも。こんなのが普通に売られていることがおかしい」(平松氏)
胸ポケットに差したペン型カメラで撮影するケースも。『ABEMA的ニュースショー』の男性スタッフが打ち合わせの様子を盗撮してみると、女性スタッフは「全然気づかなかった、こわっ……」と驚く。
機材のみならず、盗撮の方法や目的にも変化が起きている。
「脱衣所、浴場、学校内は、男性より女性が撮っていることが多い。SNS上で『女撮り師』というのが出てきていて、盗撮目的でやっている人も多い。サイトの数もたくさんあるし、SNSで売買している人間を入れたら数えられない。100億円市場」(平松氏)
手口が悪質になる一方、これまで盗撮そのものを処罰する法律はなかった。自治体によって対象行為や罰則も異なり、たとえば航空機内で行われた場合など、どの条例を適用するかといった問題もあり、泣き寝入りせざるを得ないケースも多かったという。
そんななか、性犯罪の規定を見直す刑法改正の一環として新たに成立したのが「性的姿態撮影罪」だ。性的部位や下着などの撮影や、同意せずに性交等を撮影した場合の「撮影罪」と、盗撮画像を他人に提供した時の「提供罪」、盗撮画像をネット上にアップロードする「公然陳列罪」、提供目的で盗撮画像を保管する「保管罪」が規定され、2〜5年以下の拘禁刑または200〜500万円以下の罰金と罰則も強化され、7月13日から施行される。
では、性的姿態撮影罪が適用されることで、どのような変化があるのか。AZ MORE国際法律事務所大阪事務所所長・中川みち子弁護士は「犯罪対象の画像等だけではなく、押収物の記録全部を消去できるようになった点がポイント」だと解説するが、注意点も指摘する。
「基本的に下着や性的部分、わいせつ行為時の姿態の盗撮が対象であり、スポーツ選手を性的な意図を持って盗撮することは、着衣の上からの撮影なので対象になりません」(中川みち子弁護士)
平松氏もまた、「まったく防止にはならない」と疑問視するが、盗撮から自分を守る方法はあるのか。
「身の回りのものすべてにカメラが仕込まれている時代で、カメラという認識で探すのは無理。カメラ(の場所)を考えて対策するのは、ほぼ不可能に近い。ネットで『トイレ 盗撮』『風呂 盗撮』といったキーワードで画像検索し、そこに何があるか逆に見てもらい、犯人の視点で考えて探してもらうほうが発見しやすい」(平松氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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