不燃ゴミに出した「モバイルバッテリー」の発火相次ぐ 「家電量販店で回収してもらえなかった」「自治体も引き取ってくれない」…どう捨てる?
【映像】「一目でわかる」モバイルバッテリーの捨て方

 いつでもどこでもスマホの充電ができるモバイルバッテリー。実は近年、不燃ゴミなどと一緒に捨てられ、破砕処理などの際に発火する事故が多発している。その被害額は2018年度からの4年間でおよそ111億円。

【映像】「一目でわかる」モバイルバッテリーの捨て方

 発火シーンを再現した製品評価技術基盤機構(NITE)による注意喚起も話題となった。モバイルバッテリーなどに使われる「リチウムイオン電池」が発火するというが、一体どう処分すればいいのか。

 Twitterでは「家電量販店では回収してもらえなかった」「自治体でも引き取ってくれないみたい」「どこにも回収してもらえない」と困っている人が続出。

ABEMA Prime』では、正しい処分方法や実情について、10年以上ゴミ清掃員としても働くお笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一に聞いた。

■モバイルバッテリーの正しい捨て方

 ゴミ清掃員として働く中で発火を経験したことはあるのか。滝沢は「僕自身はないが、友達の清掃車が燃えたことはある。『周りの部分がプラスチックだから大丈夫』と考えるのか、時々可燃ゴミの中に入っていることもあり、僕も何度か取り出した。可燃ゴミとしては回収できないので、シールを貼ってその場に置く」と説明。時間が経って清掃車内で発火してしまうと、消防車を呼ぶしかないという。

 リチウムイオン電池とは、90年代以降に実用化した二次電池(充電式電池)。モバイルバッテリー、スマホ、ワイヤレスイヤホン、ノートPC、加熱式タバコ、携帯扇風機、電動歯ブラシ、コードレス掃除機、シェーバー、デジカメなどに使用されている。

 正しい処分方法として、資源有効利用促進法(2001年)により、メーカー・輸入事業者に回収・リサイクルを義務づけている。コバルト・ニッケルなどの希少金属は回収され、耐熱鋼等特殊鋼(ジェットエンジンなどの材料)などに再利用されるという(番組まとめ)。

 小型充電式電池の再資源化に取り組む一般社団JBRCになぜ回収できない製品があるのか聞いたところ、法律上、回収義務があるのはメーカーと輸入業者。会員のメーカーの委託を受けて回収するものの、それ以外は不可だという。また、会員メーカー以外の電池を捨てたい場合はそのメーカーに要望する必要があるほか、宅配での回収となると膨らんでいたり危ないものは受け取りができないということだ。

 さらに、自治体によって対応の差も。例えば東京都江東区では乾電池などと一緒に燃やさないゴミの日に回収されるが、世田谷区は区としては収集しておらず、リサイクル協力店などへの持ち込みを勧めている。

 滝沢は「皮肉にも燃えやすいのは不燃ゴミだ。燃えるゴミは、生ゴミなど水分があったりして燃えにくかったりする。プラスチック資源はそもそもが石油だったりするので、火がつくと一気に燃えてしまう。なので、予想でゴミを捨てられるのは危険だ」とも警鐘を鳴らした。

■新しいエネルギー社会の描き方

 滝沢は「処理をするほうだけが責任を持つのはどうなのか。清掃車だけではなく、処理場のベルトコンベアが燃えたとなると数億円の損失になるし、元々税金で作られているものなのでみんなで考えていかないといけない。アメリカでモバイルバッテリーを買うと、中に封筒が入っていて、『使い終わったら返送して。他のメーカーでもいいよ』と記されている。日本はそういうところがまだ発展していない。例えばコンビニでの回収などもこれからは考えていくべきだ」と考えを述べた。

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「今のバッテリーは持ちが悪いし、もっと効率的な充電方法は世の中にあるのではないか」と疑問を呈する。「例えば映画館の中にワイヤレス給電の設備を置いて、客席にいる人のスマホなどが全部自動的に充電できるようになれば、誰もモバイルバッテリーの心配をしなくなる。そういう方向に進むのがテクノロジーのあるべき姿だ。太陽光とか風力などの再生可能エネルギーが普及しにくいのは、蓄電できないからであり、その結果、原子力に頼らざるを得なくなっている。我々が電力をどう扱うのかという大きな話として捉えるべきだ」との見方を示した。

 脳科学者の茂木健一郎氏は「個々の人がスマホで使う電力もあるが、インフラとしての電気をどう確保するかが重要。いずれにせよ、バッテリーをどう廃棄するかはきちんと考えないといけないが、逆にビジネスチャンスではないか。ゴミ業界のGAFAみたいなものができてもおかしくないと思う」と持論を展開。

 プロデューサー・慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「これだけいろんなテクノロジーが詰まったものと共存する社会を作り上げた割には、日本は“付け足し”でしかやっておらず、大きなエネルギー社会を描けていない。本気でみんなが電気を使って新しい社会を作るとなれば、一部のヨーロッパが打ち出しているEV公共充電所のようなところを作って税金で賄う。それくらい根本的に作り変えないといけない」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)

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