夏休みを心待ちにしている子どもたちも多い一方で、不安を抱えている人たちがいる。子育て困窮世帯だ。
【映像】3人の子どもを育てるシンママ・レイコさん一家の家計内訳
NPO法人「キッズドア」は、夏休みを前に支援を行っている子育て世帯を対象に調査。その結果、9割が「給食がない夏休みの食事に不安がある」と回答している。理事長の渡辺由美子氏は「子どもが栄養失調でやせたり、それを心配する親がどんどん病気で倒れていく。こういう状況が起こるのではないかと強く予想される」と警鐘を鳴らした。
問題視される子どもの貧困。政府や自治体、民間に求められる根本的な解決策はあるのか。『ABEMA Prime』で議論した。
■「自分の食事を子どもに充てる」
埼玉在住で、高3・高1・中1の子どもを育てるシングルマザーのレイコさん(39)。夏休みについて、「やはり給食がなくなるということで、食費がいつもよりかかってしまう。特にうちは男の子が2人いて食べ盛りでもあるので、お米は切らせない。自分の食事を少し減らして子どもに充てるということはずっと続けている」と説明。
洋服代や美容代は「自分にはかけなくても」という思いがあるものの、「学校だと頭髪検査もある。思春期の子どもの髪を変にしてしまうわけにもいかないので、自分で切るわけにはいかず、どうしてもお店に頼る」と話す。
レイコさんの月の収入は、営業職によるものが約11万円、児童扶養手当が約6万円、児童手当が約1万円。元夫からの養育費はなく、親も県内にいるが基本的には頼っていないという。
「コロナで緊急事態宣言が出た時に、1~2カ月に1回食料を配っていた子ども食堂がある。今もお弁当を無料で配布してくれるので、支援を受けている。そこは所得が低い家庭や生活が困窮している年配の方、私のようなひとり親なども満遍なく支援しているので、すごく助かっている」
渡辺氏は、「コロナで貯金を使い果たしてしまって、さらに足りない分を借入れした人が多い。夏休みの食費が足りないからカードのキャッシングでどうにかしよう、とか。誰からも借りれないから食べずに我慢をするという選択をする人もいる。給付金をもらえるのはごく一部で、ほとんどの方は大変な状況だ」と、コロナ明けの現状について説明。
キッズドアの調査によると、3人家族の困窮家庭の食費は40%が「3万円以下」、つまり1人1食110円以下だ。
「1人当たりの月の食費が1万円未満だと、1日300円。白米をお腹いっぱい食べるのは難しいし、1日3食というのも大変だ。肉や魚が買えなくて、家では白米にふりかけだけという方がすごく増えている。そういう家庭では卵が重要なたんぱく源だったが、今は値段が上がり、『卵がイベント食になってしまった』という答えがあるくらい。子どもが夏休み明けに痩せている、というのはコロナの前からあったが、これも増えていると思う。さらに今年は電気代が値上がりしているので、エアコンをつけないとか、1部屋に集まってそれ以外は電気を消すなど、涙ぐましい努力をしても乗り切れるかどうかという状況だ」(渡辺氏)
■国や自治体だけでは目の前のことに対応しきれない?
そもそも収入を増やすという選択肢は取れないのだろうか。レイコさんは「アルバイトであろうが、正社員であろうが、『お子さんに何かあったらどなたが見るの?』というのは、ほとんどのところで聞かれる。実際に子どもが病気になったり、立て続けにインフルにかかることがあった。日中18時まで働いて、19時に帰ってご飯を用意して、また20時から0時まで働くようなダブルワークも数年やったが、体を壊し、持病を持つことになってしまった。今は正社員として働いているが、それはそれで辛いと思うことも多いので、働き方は、必ずしも今の形にはこだわらない。お金を増やしたいとは思うが、一緒にいられるうちは子どもとの時間を大事にしたいと思う」と話す。
渡辺氏は「政府は個人のリスキリングを期待しているが、日本では1回働き始めるとその仕組みがない。いわゆるアルバイトやパートを始めると止めることができないので、ワーキングプアが必然的に継続されてしまう。収入の高い仕事に就くための資格取得やレベルアップが自力だと難しいので、その仕組みから変える必要がある」と指摘。
また、「生活保護は絶対に受けたくないという方が非常に多い。今の制度では子育て世帯は受けづらいし、1回受け始めると抜けるのが大変。受ける時にはわずかな貯金も車も手放すというところで、“そこまでは”という思いから頑張っていらっしゃる方が非常に多い」と伝えた。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「こういう話になると、“国や自治体は何をしているのか?”となるが、それですべてが解決するわけではない。自助・共助・公助、これは社会における助け合いの仕組みとしては非常に重要だ。日本は戦後、企業社会が中心となり、会社に所属することで共同体的な安心感と収入を得られてきた。ところが、21世紀に入って共助的な企業社会は衰退し、終身雇用もなくなり、非正規雇用が4割くらいになっている中で、共助部分が完全に欠落している。もちろん公助として国や自治体の役割も大事だが、一方でお互いに助け合う仕組みをちゃんと作っておくこと。キッズドアみたいなNPOにお金を支援するとか、近くにある子ども食堂を支援するとか、個人がお金や手を出していくということも重要だ」と投げかける。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「ひとり親の支援となると、世帯が対象で、子どもへの直接支援はものすごく少ない。ここを増やしていくのは総論的に必要だ。ただ、夏休みという課題が目の前にある中で、今すぐに支えられるのはNPOだ。まずは寄付をしてみるとか、寄付する余裕がなければ広めてみるとか、個人でできることをやる。レイコさんは支援を受けていらっしゃるが、それでいいと思う。支援にやっとたどり着いても、『私はこれを受ける資格がない』『申し訳ない』と言う方がたくさんいるが、今困っているのであれば、“支援する側と支援される側”という立場を活用すべきだ。それぐらい低いハードルで支援にアプローチしてもらいたい」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
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