頭に思い浮かべただけで相手にすべて伝わる。そんな夢のような話が実現するかもしれない。
「画像生成AIが脳活動を読み取って視覚化することに成功した」(大阪大学大学院・高木優助教)
目にしたものや、頭の中で思い描いたイメージを画像に。まるでSFのような技術を生み出したのが、脳とAIを組みあわせた研究を行っている大阪大学大学院の高木助教らの研究チームだ。脳の解析にAIを活用するなかで、世界的な人気を誇る画像生成AI「Stable Diffusion」に目を付けたという。
画像生成AIは、目に入る「視覚情報」とその状況を示す「意味情報」を与えることで高精度な画像を出力する。2つの情報を脳データから読み取り、入力できるデータに変換して落とし込むことで、脳活動の映像化ができるのではないかと考えたそうだ。加えて、アメリカの研究グループが公開した大量の脳画像のデータも研究の追い風になったという。
「(例えば)クマを見ている時には脳の視覚野の部分がある一定のパターンで活動し、飛行機を見ている時には別のパターンで活動する。そういった“違い”をAIに読み込ませることによって、今の脳活動がどんな画像に対応しているのか、どんな意味なのかを解読することができる」
「fMRI」という、脳のどの領域が活動しているかをリアルタイムで画像化できるという手法を用いて、被験者に画像を見せた際の脳活動のパターンをデータ化。それをAIに学習させることで、より高い精度で頭の中の画像を再現することができるようになった。
実際どの程度まで再現できるのだろうか。
「大枠の何が写っているかといった部分は明らかになっているものの、細かい部分はまだまだ課題がある。これから、もっともっと向上していく余地はある」
課題は多いものの、この研究にはいろいろな可能性が秘められているという。
「人以外にも、ネコ・サル・犬など様々な動物が脳を使って世界を認知していると思っている。実際にそういった動物たちの脳活動を計測して、何を考えているかを視覚化することで、ある意味“コミュニケーション”も可能になるのではないか。そういった世界もあると思う。
視覚情報に限らず、例えば何かを想像した際の脳活動などに使えれば、自分が考えていることを視覚的に伝達することが可能になる。医療やエンターテインメントなど、様々な分野で応用できるのではないか」
fMRIを用いた脳活動の画像化について、『ABEMAヒルズ』に出演した琉球大学・工学部教授の玉城絵美氏は次のように説明する。
「今までは医療で使われていた装置だ。特に大阪大学と周辺の研究所は『工学的に利用できないか』という研究をしている。脳活動をここまで鮮明な画像として出せたということは、動画で出力できるようになる可能性も考えられる。例えば、植物状態の人の考えを読み取って『今、こういうことを考えています』『こんなことをしてほしいです』というのをリアルタイムに表示することができたり、夢でみた映像を出力することもできるようになるかもしれない。
『考えていることを映像化する』ということで、利便性はあるが恐らく今後は倫理規定などが構築されていくと思う。一方で、あがり症の原因など、言語情報化できなかったものを分析して、心療内科的な治療の一助となる可能性もあると思う。装置自体が大きく『シールドルーム』という部屋も必要になるので、道のりは長いと思うが素晴らしい技術だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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