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「倒したかった」
「勝ったけど倒せなかった」

 格闘技の試合後、選手がよく口にする言葉だ。誰もが、できるならKOで勝ちたい。しかしそれは簡単にできることではない。

 そういう中で、K-1女子フライ級王者のKANAは倒しにいって倒す、理想的な闘いを見せている。昨年6月から4試合連続でKO勝利。7月17日の両国国技館大会ではマッケンナ・ウェイドを1ラウンド52秒で倒してみせた。中継の解説を務めた魔裟斗曰く「いい意味で女子じゃない」。

 試合後のKANAにインタビューすると「女子(格闘技)の概念を変えたかったです」と言う。それもデビューした頃から。女子はパワーがない、KOが少ない、迫力がない。そういうイメージを変えるために、KANAは闘ってきたのだ。

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 ウェイド戦は左ミドルキック1発での悶絶KO。たった一撃でボディを効かせて倒し切ってしまったのだから驚いた。ウェイドは「倒れてから10秒くらい呼吸ができなかった」と振り返っている。「それを狙っていたわけではないんですけど」とKANA。しかしそこには確かな“KO理論”もあった。

あのミドルは相手がローを蹴った後のリターン。蹴った後というのは息を吸う瞬間なので、そこにミドルが入りました。蹴り方もいつもと違って、下から蹴り上げて相手のお腹の向こう側まで蹴り込むイメージ。練習してきた形で、最短距離で打ち抜きました」

 見事な一発としか言いようがない。KANAも「ミドル一発で決められたのは自信になりました」と語る。その自信とともに狙うのは、以前から対戦を望んできたアニッサ・メクセンとの試合だ。

 以前からその存在は知っていたが、5年ほど前に初めてその強さを“体感”する機会があったという。

「タイに練習に行った時にたまたま一緒になって、スパーリングもしたんです。ヘッドギアをつけてグローブは14オンス、それでもボコボコにされました。“こんな強いヤツがいるのか”って衝撃でしたね」

 最初は「アニッサみたいに強くなりたい」と思った。しかし徐々に「アニッサに勝ちたい」と思うようになっていく。KANAは過去にアニッサと対戦した選手にも勝っており、そのことで“打倒アニッサ”がリアルな感覚になっていった。

「今だったら勝てるんじゃないか。そういう自信があります」

 K-1でアニッサに勝つだけではない。その先も見ている。

「たとえばONE Championshipでも、私と同階級に強い選手がたくさんいる。K-1の枠を超えて世界の強豪と闘いたいです」

 そう思うようになったきっかけの一つが、昨年6月に開催された『THE MATCH』だという。K-1王者としての先輩にあたる武尊が実現に向けて動き、那須川天心と闘ったメガイベントだ。この大会がきっかけで立ち技格闘技業界は大きく変わり、その後もK-1とRISEの対抗戦が行なわれている。

「去年の『THE MATCH』があったからこそ、自分たちも思うことを口にできるんだと思ってます。選手には闘いたい相手がいるものだし、それは口にしないと実現しない。リスクを背負わないと前に進めないので。選手生活は決して長くないですから。口にすることで実現させていきたいです」

 女子という枠、そしてK-1という枠をも超えるKANAの意思。それはファイトスタイルにも共通するものかもしれない。なぜ“倒せる”のか。KANAはそのイズムを語ってくれた。

「大事なのは恐怖心をなくすことです。自分が攻撃を出せば、相手のカウンターをもらいやすくなる。反撃される恐怖を突破して、中途半端じゃなく思い切り殴る、蹴る。そうすることでKOが生まれるんだと思います」

 試合も、キャリアそのものも、KANAは常に攻め続けているのだ。

文/橋本宗洋

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